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ショート・ショート

星物語<6> 双子座の話

   

星をテーマにしたショート小説です。幻創文庫にはふさわしいと思います。

 

 双子座のC五星区には、およそ二十億個の星がある。
 その星区を、古ぼけた宇宙船がゆっくりと進んでいた。
 乗っているのは一組の夫婦である。
 二人は、C五星区にある二十億個の星を片っ端から調査していた。
 夫が船を巧みに操縦して調べる星に探査機の照準を合わせると、妻が慣れた手順で調査をしてデータを取り込むのだ。
「どうだい」と、夫。
「ダメ、違うわ」
「じゃ、次に行こう。まだ調査していない星はいくつある?」
「約八千個よ」
「もう、それしか残っていないのか……」
 この夫婦に子供ができたのは、結婚してから十年経った時であった。
 ほとんどあきらめかけていた時に授かった子供なので、二人は、手放しで喜んだ。
 だがしかし、生まれて一年もしないうちに、その子供は病気で死んでしまった。
 悲嘆に暮れた夫婦を救ったのは、高名な占星術師の言葉であった。
「お子さんは、星に生まれ変わり、双子座のC五星区にいます」
 夫婦は、すべてを投げ出して子供に会いに行くことにした。
 ほとんどスクラップ寸前の宇宙船を買い、持てる技術のすべてを使って、超光速飛行が再びできるように修理をした。
 探査機だけは高価な新品を備えて、まっしぐらに双子座へと向かった。
 そして、片っ端から星を探査して、星となった子供を探しているのである。
「調査していない星はいくつある?」
「約八千個よ」
「もう、それしか残っていないのか……」
「調査しつくしても見つからなかったら、また最初から探し直しましょう」
「もちろん」
 優秀な科学者であり技術者でもある夫は、探査機が万能でないことをよく知っていた。
 機械の限界、ソフトのバグ、測定誤差など、探査から漏れてしまう要因はいくつもあるのだ。
 もし見つからなかったら、見つかるまで繰り返すだけだ。
 優秀な科学者であり母親でもある妻は、母親の直感から、この星区に子供がいることを確信していた。
 もし探査機が見逃してしまっていたら、見つかるまで繰り返すだけだ。

 淡い光を放つその子供の星は、超新星の陰に隠れていた。
 最新鋭の探査機がその星を探知するのは、ちょうど二日後のはずであった。

 

─Fin─

 

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