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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(4)

   

松下たちは、熱心な学生を装うことで、怪しまれることなく潜入を続けていた。表向きの仕事にも慣れ、同僚とも親しくなっていった松下たちは、図書館の一つの特徴に気付くようになっていた。

そんなある日、松下たちは、図書館の先輩である小倉に声をかけられる……

 

 松下たちは、別々のセクションで、仕事をこなしていった。
 もちろん、目的は仕事をこなすわけではないが、サボっているよりは真面目に働いた方が、会社側からの覚えはめでたくなるし、「別の目的」を疑われずに済む。
 また、社員との良好な関係を築くことで、何か秘密のきっかけのようなものを掴むことができるかも知れない。
 そうした思惑から、松下たちは、他の一般学生と同じように、熱心な態度で仕事に臨んでいたのだ。
「返却は来月の三日になります。また、どうぞお越し下さい」
「おう、ありがとな坊や。まったく、うちのボンクラも、松下君ぐらい熱心に働いてくれればよ」
「ふふ、ありがとうございましたっ」
 図書館を出ていく五十代半ばぐらいの男性社員の背中に向かって、松下は深々とお辞儀をしていた。
 マニュアルに沿った内容ではなかった。
 図書を陳列して整理し、貸し出す、一見ルーティンワークにも似た仕事の根っこにある、書籍を、そして知識を司り、管理するという意義の深さと充実感が、松下に丁重な態度を取らせていたのだ。 元々人には臆病な新藤も、来館者には社交的に接することができるようにもなってきている。
 シュウや千夏、他のメンバーや一般の学生たちも、大学の講義の際とはまた別次元の真面目さと熱心さで、仕事に励んでいた。
 仕事そのものの魅力、というより、大企業の中で働くやりがいが、皆に熱意を持たせているようだった。
「ようっ、よくやってくれているな、松下ちゃん。昨日の納本・企画会議も、皆絶賛だったぜ。臨時雇いじゃなくて、司書の資格でも正式に取って、ウチで働いて欲しいもんだ。こう言っちゃ何だが、学生にしとくにゃもったいねえよ」
「あははっ、ありがとうございます。しかし、もったいないお言葉ですよ。真面目にやっているだけですから」
 松下は、柔らかく談笑しながらも、小倉の表情や態度に隙は無いか、視線を向けた数瞬の間で、徹底的に探っていた。
 いくら仕事が充実していようと、あくまで松下たちの目的は、この企業グループのどこかにあるだろう、「パイプシューター」を探し出すことだ。
 機密に触れる以上、社員にも会社にも心を許すことはできないし、もちろん、長居することもできない。秘密の大きさからして、騒ぎに乗じてバイト先から失踪し、どこかに身を隠すぐらいのことはしないと、松下たちの命は危険に晒されるだろう。
 表面的な居心地の良さに安住するわけにはいかない。

 

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