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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(7)

   

廃校舎の改修工事が始まった。そして、改修工事最中の深夜、セキュリティシステムがまだ稼働しておらず、作業員が退くごくわずかな時間帯こそが、松下たちにとって、唯一無二のチャンスだった。

様々な方面から、自分たちの潜入をしやすくするための仕掛けを打った松下たちは、指揮車の中で、意図的に流された情報に動かされた侵入者たちの動向をうかがっていた……

 

 平和な日本という国の中にあって、常に銃器を製造し続けることによって存在感を示してきた「白波カンパニー」の敷地が、今はほとんど完全な静寂に包まれている。
 前身の「井口鉄機」の頃から含めれば、この区画がここまで静かになるのは、およそ半世紀ぶりのことらしい。
「完全休業、操業停止」の指令は、現場の社員を歓喜させた。
 臨時の休みが貰える上に、給料まで入ってくるのだから、こんなにおいしい話もない。
 管理職クラスの中には、このあまりにも急で気前のいい休みをいぶかしがる者もいたらしいが、国との強力なパイプがある上、業績は常に安定しており、指定された納期もクリアできているということで、強硬に反対する者はいなかったようだ。
 今日、会社の敷地内にいたのは、警備システムを設置する作業要員のみだ。そしてその作業員たちも、夕方までに仕事を終えて、一旦、会社に戻っている。
 本来、当然いるべきである警備担当者も、もちろん詰めている。しかし、警備担当者が詰めていることと、実際、真面目に警備任務が行われることの間には、あまりにも多くの違いがある。
 そして、今日「井口鉄機学校」に詰めている人間の多くは、意図的に不真面目さを発揮しようとしている連中だったりするのだ。
「何だよ、こんなやり方があるってなら、最初から言ってくれればいいのに」
「……できれば使いたくなかったんですよ。学校のテストでゼミ生全員に満点を取らせるような無茶をいくつもしましたから。今回の準備には」
 松下のねぎらうような軽口に、傍らに立つシュウは、にこりともせず呟いた。
 不機嫌というよりは、心身の消耗で、テンションが上げられないと形容した方が正しいだろう。
 シュウの頬はわずかにこけ、顔色も普段より青白く、怜悧な印象を強めていた。
 ぺこりと頭を下げて謝る松下は、メジャーな警備会社である「ダイナナセキュリティ」の制服を着込んでいた。
 シュウも同様である。
 新藤と千夏は、校舎を挟んでちょうど反対側のところで、同じく有名警備会社の一つである「二十一世紀ガーディアン」社の人間として、警備任務にあたっているはずだ。
 他にも、松下たちと同じように、「不真面目」に仕事をこなすため、多くの人間が潜入している。

 

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