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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(10)

   

沢口の負傷という犠牲を乗り越え、何とか廃校舎内への潜入を果たした松下たち。しかしそこは、かつて教室だったとは思えないほどの大改造を、古代の逸話に従う形で施されたという、「罠の大迷宮」だった。

大き過ぎる危険と知りつつも、退けない事情を持つ松下たちは、どうにか前へ進もうとするが……

 

 廃校舎内には、薄ぼんやりとした灯りがついていた。しかし、その光は弱く、とても十分とは思えない。
「ご注意を。灯りを逆利用した心理トラップが用意されているかも知れません」
 部屋を見回しながら、シュウが独り言のように声を出した。
 部屋の中は、不自然なほどに殺風景だった。
 何の調度品も置かれておらず、真っ白い床が、光に反射していた。
 床にも壁にも、落書きはおろか、ほこり一つ残っておらず、異様な清潔さが保たれていた。
「気を付けろっ。何か変だぞ、この部屋」
 松下も、鋭く注意を促した。
 廃校の中にあるにしては、部屋の清潔さは完全に不自然だ。
 調度品がまるで見当たらないのも、極めて作為的なものを感じるし、何よりも、教室にはつきものの引き戸がなく、代わりにたくさんの扉があるという造りは、あまりにも作為的で不気味である。
 扉の色が、赤や青、黒といった具合にカラフルなところも、嫌な感じがする。
「ペ、ペンキは塗りたてのようですね」
 新藤が得意の観察力を発揮して、目ざとく扉の状態を掴む。
 しかし、その言葉をきっかけにして、さらなる判断材料を引き出せるほどには、松下の精神状態は平静ではなかった。
「とにかく進んでみようぜ。こんな気に食わねえ部屋になんかいたくねえしな。時間は無駄にはできねえんだからよ」
 少しばかりシュウに当てつけるようなニュアンスを含めた物言いをしつつ、松下は、外壁と同じ、白い色の扉へと進んでいった。
 シュウ達も無言で歩き始める。
 誰しも、こんな不自然な部屋にはいたくないというのが本音だろう。
 ただ、扉そのものは特別なものではなく、木製で、回転式のノブが付いたものだということが、近付くにつれて分かった。
 松下は、シュウや新藤が隣にいる状態で、ドアから数歩のところまで近付いた。

 

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