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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(11)

   

千夏に襲いかかってきた「罠」は、吸血ヒルだった。罠と迷宮に関する古い言い伝え通りに、敵は、「吸血の罠」を仕込んでいたのだ。

単体では、虫のサイズは小さく、痛みも伴わなかったが、複合的であり、しかも圧倒的な数量とあっては、しらみつぶしに叩くことはできない。

しかし、そんな窮地にあっても、シュウは、普段の冷静さを崩すことはなかったのだった……

 

「ち……っ!」
 松下は、叫び声を上げかけたが、口からはごく小さな声が漏れ出ただけだった。
 大声を上げて、指示を飛ばした方が、明らかにいいのは分かっている。
 だが、千夏の体にまとわり付いている無数の「何か」のグロテスクさに心が押され、声を出せなくなってしまったのだ。
「ああああっ、いやあっ、いやああっ!」
 千夏の絶叫に、もちろんシュウも新藤も気付いている。
 しかし、松下と同じように、その場で立ちすくむだけで、声を出すことも、千夏に駆け寄ることもできない。
 あまりにショックの大きい光景を目の当たりにしたために、頭脳が思考を止めてしまっているのだろう。
「ひゃっ、う、動くっ!? ふ、膨れてっ! いやあああっ!」
(む、虫、なのか……!?)
 ただ、松下の頭は、辛うじて働きを保っていて、さらに、目の前の光景をシャットアウトもしなかった。
 そのため、黒くうねる物体が、千夏の首筋や手先などの肌が露出している部分に這い寄っていき、目的地に到達したものから順に、その小さな体をぷくりと膨らませていくのを認識することができた。
 千夏に、何かをしているのだ。卵を産みつけているのか? いや、胴体が膨れているということは、何かを吸っているのだろう。 人の手先や首筋から「吸える」ものは何か? 吸うような存在は、何か?
 考えが進んだところで、松下の頭の中に、一つの単語が浮かび上がった。

 

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