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ラブストーリー

恋は朝焼けの雲に乗って<後編>

   

一大決心の末、恋する武本とばっちり結ばれたわたし、美穂。
私と武本はあの夜以来、毎晩のように身体を重ねた。

そんなある日、父が商用でタイへ行くことになり、武本もボディーガードとして同行することになった。
それが、こんな信じられない事態になるなんて!!

「現代ヤクザ」の娘(17歳)と「鉄砲玉」武本(25)のラブストーリー・完結編。

 

 それから、わたしは毎晩のように武本の部屋に忍び込むようになった。
 武本はあまり人付き合いをしないし、わたしは普段から無口な娘で通っているし、誰もわたしたちを怪しむことはなかった。

 そんな日々を過ごすうちに、セックスが終った後、武本は一服しながら、ぽつりぽつりとわたしにいろんな話を聞かせてくれるようになった。
 なぜ自分がヤクザになったのか。
 なぜ、命を捨てるような真似ができるのか。
 そんなこと。

「俺のオヤジも、昔、九州のほうでヤクザをやっとったんよ。
 美穂ちゃんとこのおやっさんみたいに大きな組じゃなくて、小さな組でね。
 小さい組やから、あの頃は抗争、抗争や。俺のオヤジは有名な鉄砲玉で、抗争やというと、腰に二丁拳銃ぶら下げて、背中に日本刀しょって、手には猟銃を持って殴りこんどったらしい。
 何人殺したかわからん。
 その功労で偉くなったらしいんやけど、シノギは下手やし、商売はできんし、平和なときにはただの目の上のたんこぶになってな。
 で、ある日、オヤジはお袋と一緒に海に浮いたんや。
 俺が小学校3年生の時やった。
 オヤジはともかく、優しいお袋までなんでや、って、俺は気がおかしくなりそうやったわ」
「殺されたってこと?」
「おそらく。でも、結局誰がやったんかは今だに謎や」
「復讐したいの?だからヤクザになったの?」
「いや。ヤクザになったんは、かえるの子はかえるだっていうだけやと思う。
 オヤジとお袋が死んだあと、面倒みてくれた大阪の伯父貴もヤクザやったしな。
 水が下に流れるようなもんや。
 まぁでも、もしもお袋が生きとってくれたなら、おそらくこんなことはしてへんやろうな。
 鉄砲玉しとるときは、いつでもオヤジが俺の側にいるような気がするんや。
 二丁拳銃ぶらさげて敵地に乗り込むときはいつも、俺にオヤジが乗り移ってる、と思う。
 俺はもう何人殺したかわからん。
 そんなんいちいち覚えてへんわ。
 まぁでも相手もみなヤクザなんやから、俺を恨んだりせんやろと思う。
 俺がオヤジの敵を別に恨んでへんみたいにな。
 オヤジだって何人殺したかわからんのや。いつ誰に殺されようとそれは寿命やろ。
 でもお袋はかわいそうやったと思う。
 俺の中では、お袋は今も海に浮いたままや。
 俺がいつ死んでもいいと思ってるのは、お袋の側に行きたいからや。
 10歳のガキのときの気持ちがまだ忘れられないんや。
 別にもう復讐とか、そういうことは考えんけど、お袋が恋しいんや。
 俺、マザコンなんよ、いい年して。おかしいやろ?」
 武本が、煙草の煙を吐き出しながらゆっくりと話す。
 わたしはそんな話を聞いているとき、いつもとても、武本がかわいそうで、そしてとても寂しくなった。

 そんな日々だったが、武本がいるという噂が功を奏したのか、なかなか抗争は勃発せず、新興勢力とうちの組はいつのまに小康状態を保つようになっていた。

 そんな中、父が商用でタイへ行くことになり、ボディガードに武本を連れて行く、ということになった。
 一週間ほどの日程ということで、何の気なしに、武本はわたしの父に付き添い、タイへと旅立って行った。
 それが、まさか、あんなことになるとは。
 人生には何が起こるかわからない。一寸先は闇とはこのことだと思う。

 

-ラブストーリー

恋は朝焼けの雲に乗って< 第1話第2話

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