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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(13)

   

一度シュウの手から離れてしまった「虎の子」の防虫煙幕を起動させたのは、銃弾だった。松下たちは、ライフルを構えた一人の男に助けられたことを知る。

ライフルを担いだ男は、誠実だったが、一方で、かなりのレベルの「お礼」を要求してきた。男の側にも、失血死寸前にまで追い込まれた仲間がおり、彼を助けるにはどうしても、松下たちの「持ち物」が必要だったのだ。

だが、シュウは男の要求を拒絶しようとする。しかもシュウの口ぶりは、命の恩人に対しては、あまりにも失礼と言えるものだった。

シュウの言葉に、松下は再び、不穏な感情を抱く……

 

「た、助かりました……」
 松下は、心底から、感謝の意を述べ、男の手を握った。
 ライフルを肩に担いだ男は、細身だがしっかりとした筋肉がついた、精悍な体つきをしている。
 しかし、顔色は良くない。控え目に言っても蒼白といったところで、まるで生気が見られないのだ。
 もし仮に松下が、一年間陽の光を浴びずに暮らしたとしても、ここまで生白くはならないだろう。
「何とお礼を申し上げていいか」
 声を出し、姿勢を正しかけるシュウたちに向かって、男は手ぶりで、座るように促した。
 混乱の中にあっても、シュウたちが限界にきていたことを、正確に把握していたらしい。
 シュウや新藤は、ふうっと大きなため息をついて、床に寝転がるような体勢になった。
 血を吸われたことと、相次ぐ攻撃の連鎖によって、心身双方が、限界近くにまで追い込まれている。
「運が良かった。この道で休んでいなかったら、君たちを助けることもできなかった。一旦、引き返して正解だったな」
 男は、しみじみと語ってから、壁に背中を押し付けた。どうやら彼もまた、相当に消耗しているらしい。
 良く見ると、真っ白な肌には、うっすらと脂汗が浮かんでいるのが分かる。
 もっとも、この「罠の巣」を進んできた以上、当然の反応とも言える。助けられて、少し気持ちに余裕ができた松下は、少し話を聞いてみようという気になった。
「この先に、進んでいたんですか? 一体どんな罠があったんです?」
「まあ、進んだって言っても、ほんのちょっとだけどな。色々な面倒な認証キーがかかってて、なかなか理想のルートには辿りつけなかった。この先には、何か霧を噴射する装置みたいなのがあったぜ。黒い霧で、うかつに触ると皮膚が傷つく厄介なやつが。こいつで、撃ち壊させてもらったがな」
 男は、自分の持っていたライフルの銃身を、ぽんと手で叩いた。 全体的に、黒い柱のようで、さきほど見た、銃座設置型の「パイプシューター」よりも洗練されている印象がある。
 前に、草尾たちが持ってきた、「黒柱」に違いなかった。
 シュウが珍しく、驚きを表情に出し、松下の言葉を引き継ぐように、声を出した。
「そ、それを、どこで……?」
「ずっと先に進んで、『霧の罠』を超えて、分かれ道を右に曲がったところに、小部屋というか、ちょっとしたスペースがあったんだよ。消火器具でも置いてんのかなと思ったら、銃だったんで驚いたよ。俺も少し心得があるが、アメリカの射撃場じゃあ、見ねえタイプだな。似たようなのが色々ある中で、一番マシに見えるヤツを持ってきたんだが、他のも一応は撃てる感じだったな。まあ、この状況下じゃ、あって困るようなものでもないだろう。何か、大事なものなのか?」

 

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