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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(14)

   

吸血生物の脅威から松下を救ったライフルの男は、襲撃してきた敵たちまでも、あっさりと無力化することに成功した。

しかし、襲いかかってきた迷彩服の男たちも、「白波」の所属ではなく、元々、桜田の名誉を回復するために駆けつけた男たちだった。仲間を人質に取られ、やむなく、侵入者の排除に加担する形になってしまったのである。

思いがけず、協力者を得られた松下たちだったが……

 

「くっ、い、いたぞっ、総員、銃を構えろ!」
「うわっ! だ、だめだっ!」
 射撃音と同時に、野太い男たちの叫びが聞こえてくる。
 松下が、男の向けた銃の先に目を凝らしてみると、かすかに、何人かの男が迫ってきているのが分かった。
 風景に溶け込むような迷彩柄の服、さらには顔や手足の先にまでペイントを施してあったので、容易には気付けなかったのだ。
 また、彼らの体から、「気配」の類がほとんど感じられなかったことも、発見を難しくしている一因でもあったらしい。
 新藤ほどではないにせよ、それなりに自信がある松下の感知力をすり抜けてくるとなると、正面にいる男たちは、相当の腕利きだ。 恐らく、人間相手に闘争ならぬ「狩り」をした経験も、一度や二度ではないだろう。
 しかし、そんな熟練した狩人たちは、松下の傍らにいる男に銃口を向けられ、進むことも退くこともままならなくなっていた。
 彼らが手に持っていたはずの「パイプシューター」は、どれも銃身部分がぐしゃぐしゃに破壊され、人を撃ち倒すどころか、弾を発射することもできない状態で、床に投げ出されている。
 たった数発の弾で、松下の傍らにいる男が、完璧に破壊してのけたのだ。
 止まっている標的に当てるのも難しい距離と大きさであるにも関わらず、いつ来るか分からない敵が飛び込んできた瞬間に、撃たせる間もなく、銃身だけを撃ち折る。人間技をはるかに超越した冴えだった。
「……ちいっ!」
「動くな。頭を抜かれたくなければな」
 数秒間の硬直を経て、太腿のホルスターに差したピストルを抜こうとした攻撃者に対して、男は、静かに声を発した。
 一弾も命中させずに場を収めるには、ここしかないというタイミングであり、声の大きさであり、雰囲気だった。
 もし、いずれかの要素が、コンマ数秒、数ホーンでも違っていたら、銃撃戦は免れなかっただろう。
 男は、誰を射殺することもなく、ただ、何発かの弾を発しただけで、場の空気と人の動きを、完全に支配してしまっていた。
「物分かりが良くて助かったぜ。『パイプ』でバリバリやられたら、銃だけを狙って落とすのはちょっと難しかったからな。まあ、俺だけだったらともかく、こいつらのお守りもしなくっちゃならないってんじゃなあ」

 

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