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ショート・ショート

ツルッと恩返し

   

 さくらとくるみは仲良し姉妹。
 いつも金欠の姉さくらは、ある日、服を買うお金に困って妹のくるみにお小遣いを借ります。
 買った服で彼氏とのデートを無事成功させたさくらは、くるみに恩返しをするのですが、その恩返しとは……。

 長らく休筆していた佐伯昼が皆さまにお送りする復帰後第一弾は昔話「鶴の恩返し」の現代版アレンジ。
 現代によみがえる昔話の世界(?)を、肩の力を抜いてお楽しみください。

 

「あぁ、やばいなぁ……」
 いつものように学校から帰ってくると、お姉ちゃんの部屋から困ったような独り言が聞こえてきました。
 ちょっと心配になったので、着替えてすぐに様子を見に行くことにしました。
「お姉ちゃん?」
 部屋のドアが半開きなので、そのままガラッと開けて部屋に入ります。
「どうしたの? お姉ちゃん。なんか、すごい困ってるみたいだけど……」
「あ、くるみ~。そうなのよ、困っちゃってさぁ」
 お姉ちゃんはまだ制服のまんま。着こなしとかは今風の女子高生って感じで、あたしから見るとちょっとだらしないです。
 でもスタイルなんかはすごく良くて、うらやましいなぁって思っちゃうんです。あたしは、食べるとすぐお肉になっちゃうから……。
 って、あたしの話はどうでもよかったですね。お姉ちゃんの話。
「お姉ちゃん、まだ制服なの?」
「タカシから電話来ちゃってさ」
 タカシっていうのは、お姉ちゃんの彼氏さん……なのかな。お付き合いしてるんだかお付き合いではないんだか、よく分からない。
 でも、とにかく爽やか系のイケメン。お姉ちゃんの好きなタイプであることは間違いないんです!
 前に「彼氏なの?」ってお姉ちゃんに聞いたら「んー、そんなことをはっきりさせないのが大人なのよ」だって。
「ふぅん、で、どうして困っちゃったの??」
「それがね、デートに誘われたんだけどさぁ~」
「ん? どうして、それで困っちゃうの?」
 分かりません。
 お姉ちゃんはタカシさんのことが好きじゃなかったんでしょうか??
 それで、困っちゃったとか?
「あれ? お姉ちゃん、タカシさんのこと、好きじゃなかったの?」
「そうじゃなくて、服よ。着ていく服」
「あれれ? あそこにいっぱいあるんじゃないの?」
 ますます分かりません。
 そうなのです。
 クローゼットの中には、お姉ちゃんが毎月お小遣いをつぎ込んで買っている可愛い服が、たくさんあるはずなのです。
 まさか、泥棒に盗まれたとか?
 それで困っちゃってるんでしょうか。
「えぇ、まさか盗まれちゃったの?」
「もう、分かってないわねぇ、くるみは」
 お姉ちゃんはちょっとあきれ顔。
「最近、あんまり服買ってないのよ。ほら、色々あってさ、お金がさ……」
「色々?」
 その色々とは、何かの打ち上げがあるとデニーズ行ってカラオケ屋にゴー! とか、部活のたびに買い食い! とか、そういうことを指すんでしょうか?
 どうやら部活の大会が近いらしくて、お姉ちゃんは毎晩買い食いです。
「うん、たぶん今あんたが考えてることで正解よ……」
 お姉ちゃんの呆れ顔。
「……えへっ」
 とりあえず、笑っておきました。
「とにかく、最近服買えてなくてさ、流行に全然追いつけてないっていうか……」
 そうなのです。
 お姉ちゃんは流行に敏感なタイプ。パソコンにも強くて、よく女優さんのブログを見てはファッションを真似しています。
 さすがにスタイルがいいだけあって、この前、エリカ様のファッションを真似した時なんかは、本当に可愛かったんですけどね。
「お姉ちゃん、可愛いっ!」
「……別に」
 絶対、言うと思った。
 とにかく、そんなファッションにうるさいお姉ちゃんです。
「最近服買ったの、2か月も前よ?そんなの着てけないわよ」
 2か月どころか2年前に買った服だって、あたしは余裕で先発ローテーション入りです。
「まぁ、あんたも彼氏ができればわかるわよ」
「そう、かなぁ」
「ユニ○ロ、しま○ら以外にも洋服屋さんはあるってことをね」
 ……え、お姉ちゃんの中でそこまで知らない設定なの? あたし。
「だからさ、困っちゃって~」
「じゃあ、あたし、貸してあげようか??」
 本当に困ってるみたいだったので、そう言ってみました。
「ホント~? いや、言ってみるもんだね。ありがとう、くるみっ♪」
 なんか、すごい確信犯的なにおいがしますが、この際もういいです。
「いくらぐらい必要? 2000円もあれば足りるかなぁ」
 そう言うと、お姉ちゃんは固まってしまいました。
「……やっぱり、あんたユニク○と、し○むらしか知らないんじゃない」
 ……あれ?
 服の値段が分からないあたしです。
 結局、お小遣い2か月分の大金を貸すことになってしまいました。

 

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