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ラブストーリー

藍と三日月 1「駆け出した未来」

   

「言ってみろよ」

 そんな声が聞こえた気がした――。

走り出した文学少女と、世話焼きスポーツ少年。
ふたりを取り巻く日常の渦が、周囲をも巻き込んで大きくうごめき始める。

甘酸っぱくてにぎやかな、小さな街のラブストーリー。

 

「私、進学しません。小説家になりたいんです!」

 昼下がりの学校、教室内に流れ込む南風。
 勢いよく立ち上がったときの、椅子の脚と床の擦れあう鈍い音が耳にこびりついたまま、唖然とした母と先生の表情を見下ろして大きく息を吸い直した。

「ごめんなさい、失礼します」

 深く短く頭を下げ、荷物を片手に逃げ出そうと早足で進む。

「待ちなさい、直!」
「朔田さん落ち着いて、ちゃんと話し合って……」

 二人の慌てた声を最後まで聞かずにぴしゃりと扉を閉める。
 目の前にいたのは渋い顔をした彼だった。
 心臓の激しい鼓動に息があがり、言葉に詰まる。

「あのさぁ、もしかして俺のせい?」

 そのときふと、彼の隣に人がいることに気付いた。
 それが初対面の、クラスメイトの少女だった。
 彼女は腕組みをしてこちらをにやりと見つめると、ばら色の唇を静かに開いた。

「へぇ、なんか面白いことになってるじゃない」

 これが私の最初で最後の、衝動的な犯行の始まりだった。

 

-ラブストーリー

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