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星物語<9> 猫座の話

   

星をテーマにした極短の小説です。少しでも読んでいただければ……。

 

 疲れ切った子猫がベンチの下で寝ている。
 ふと気が付くと、ベンチの上には、人間が二人座っていた。
 人間に見つかってはならない。
 子猫は丸くなった。
 薄暮である。
 もう三日、何も食べていない。
 狂おしいほどの空腹だ。
 食べるものを探したい。
 だが、動けば人間に見つかるだろう。
 その方が怖い。
 人間の巨大な声が真上から落ちてくる。
「お母さん、あれが北極星ね」
「そうよ」
「小熊座の星ね?」
「ええ」
「その先が大熊座」
「よく知っているわね」
「お父さんに教わったの。あと、獅子座、山羊座、……。ねえ、お母さん」
「なあに」
「猫座って無いの?」
「そう言えば、無いわね」
「大犬座はあるわよ」
「何で無いのかしらね」
 風が出てきた。
「お母さん、寒い」
「帰りましょうか。今日は、お父さんも早いわ」
 人間が去っていく。
 子猫は、よろめきながら立ち上がった。
 寒い。
 空腹だ。
 ほとんど動く力が残っていない。
 闘争心にあふれた土佐犬が目に入ったが、もはや身体が動かない。
 小さく鳴いただけである。

 天に大犬座はある。
 だが、子猫座はない。

 

─Fin─

 

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