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ラブストーリー

LOTUS extra 〜Crossroad〜 <前>

   

「おまえはいいよな。こんな格好でも、全校生徒から大絶賛じゃねーかよ」
「大絶賛なんてされていない」
「訂正。全校生徒絶賛、おまえんトコの王子が大絶賛」

LOTUS』 ―野々宮大樹&岩橋智也―
≪「LOTUS」「となりのプリンス」 番外編≫

Illustration:まめゆか

 

 だよな。
 男子高校生の制服って、フツーはこうだよな。

 野々宮大樹は心ひそかに、自分たちの通う学園の「制服」を誇りを持っていた。時は明治中期、当時の陸軍中将の肝煎りで創られた私立中学校を母体としたこの学園は、平成に入って男女共学の中高一貫校となった現在もなお、軍服をモチーフとしたカッコかわいい制服が売りになっている。それを「最大のお気に入りポイント」にしている生徒は、少なくなかった。
 創立者が陸軍中将だったこともあり、デザインは初代から三代目まで一貫して「陸軍系」である。初代は当時の大礼服を模したデザインで、道行く人々が振り返るほどの美々しいものだった。制帽は言うに及ばず、なんと正装には白手袋までついていたのである。
 それが昭和初期まで続き、戦後、中学校から高等学校に切り替わると同時に、いわゆる「学ラン」と呼ばれる標準学生服に近いイメージの二代目が登場した。制帽は残ったが、さすがに白手袋は廃止され、二代目は肩章と銀ボタン、上衣にオンするベルトがポイントになっている。現在は応援団の団服になっていた。
 そうして転地と共に男女共学の中高一貫校になり、三代目の制服が制定されると、男子は「燕尾ジャケット」と呼ばれるインパクト大の上着を着ることになった。かなり目立つものの、カッコよさにかけては全国屈指のレベルである。女子もミニワンピース風のロングジャケットが可愛らしく、実際、この制服に憧れて「お受験」にトライする小学生が山のようにいた。
 そんな素晴らしい制服の、唯一にして最大最悪の欠点が「夏服がない」ことだった。初代にも二代目にも夏服がなかったのだから、三代目だって、別になくてもいいだろう。そんなわけのわからない理由で、三代目にも夏服が制定されなかったのである。
「くそっ! 姉貴のヤツ、好き放題に言いやがって!!」
「…………大樹。今日は朝から、同じことばかり言っている」
「それくらい、死ぬほどムカついてるんだっての!」
「夏服、大樹にだって、良く似合っている」
「似合うワケねーだろ! 常識的に考えて!!」
 大樹の、取りつく島のない態度に、光輝が肩をすくめる。
 高等部の2年生に進級し、楽しい大型連休も終わった5月下旬の土曜日。休日返上で課外活動に参加している今日、ふたりは揃って夏服を身にまとっていた。先代の生徒会長、すなわち大樹の姉こと野々宮花織が、愛する後輩たちへの「置き土産」として制定した、全校生徒待望の夏服である。
 だが、この夏服、生徒ウケはあまり良くなかった。
 正確に言えば、女子&ごく一部の男子には大ウケだったのだが、大半の男子にはすこぶる不評だったのである。万事に渡って達観している光輝でさえ、最愛の従弟から「こーちゃん、カッコいい!」とほめてもらえなければ、平常心を保ち続ける自信がなかったほどだった。
 なぜって、待ちに待った夏服が、まさかまさかの「セーラー服」だったからである。これまで陸軍系のデザインで通してきたのに、どうしたわけかの海軍転向で、女子のみならず高等部の男子でさえも、セーラー服なのである。
「あーあー、おまえはいいよな。こんな最低最悪の変態じみた格好でも、全校生徒から大絶賛じゃねーかよ」
「大絶賛なんてされていない」
「訂正。全校生徒絶賛、おまえんトコの王子が大絶賛」

 

-ラブストーリー

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