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ラブストーリー

LOTUS extra 〜Crossroad〜 <中>

   

「カノジョさん、やっぱ服とか靴とか売ってるワケ?」
「最初の年はそうだったけど、去年から正面カウンターで案内係」
「マジで!!! 花形じゃねーかよ!」
「うん。オレのふーちゃん、マジかわいい♪」

LOTUS』 ―野々宮大樹&岩橋智也―
≪「LOTUS」「となりのプリンス」 番外編≫

Illustration:まめゆか

 

 わかる、わかる。
 年上と付き合うのって、意外と苦労するもんな。

「ふーん。生徒会室って、どこも似たようなモンなんだな」
「会議室は向かい側で、隣は資料室。資料室っていうより、単なるガラクタ置き場だけど」
 港南高校のきちんと整頓された生徒会室を、大樹は物珍しそうに眺めまわしていた。壁には、ここ何代かの執行部役員の写真が飾ってある。最新と思われる一枚に、智也がやや仏頂面で映っていた。
「で、反対隣が放送室」
「放送室が近いってのはいいな。何かと便利だし」
「便利っていうほど、生徒会が直接放送するような機会もないんだけどさ。それよりうちの学校、委員会室が狭いから、会議室の取り合いになるのが困る。実質、新聞委員会のたまり場になってるし」
 なるほどとうなずきながら、大樹は港南高校の行事予定表に目をやった。智也はひと仕事終わったとばかりに息をつくと、大樹にも席をすすめつつ、近くのイスに腰掛けた。
 港南高校山岳部が校内の案内を申し出てくれたため、安達姉妹と光輝、そしてオマケの瑠音は、嬉々として出掛けている。大樹がそれに参加しなかったのは、校内見学は補佐役を務める光輝に任せ、同じく生徒会役員を務める智也と少し話をしてみたいと思ったからである。というのは建前で、実際のところは単なるエスケープだった。この夏服で他校を一周する気には、どうしてもなれなかったのである。
 ともあれ、聞けば智也は、山岳部の中堅メンバーにして、生徒会の監査役も務めているのだという。青慧学園の生徒会執行部は4役だけだが、港南高校は7役で、4役に監査と議長、副議長が加わる。青慧学園と同じく、役員のほとんどが受験勉強に追われる3年生ということもあり、実際の仕事は智也ともうひとりの2年生で黙々とこなしていた。
 そうして3年生になっても、ずるずると執行部に居残り続けるのが例年のパターンだと聞かされ、大樹は一気に親近感を覚えた。自分と智也の立場が、驚くほど良く似ていたからである。
「そういえば、そっち、執行部が4人だけってツラくない? 中高一貫なのにさ」
「いや、各クラス委員が下部組織になってる」
「そっか。ってことは、うちの総務委員会みたいなもんかな」
「たぶんソレだな。ウチはクラス委員を中高でグループ分けして、細かい仕事をやってもらってる。港南は委員会の種類とか執行部の役職とか、意外と多いよな。この編集委員会ってのは?」
「生徒会誌の編集を専門でやってるとこ。原稿の依頼くらい、早めに出せばいいのにさ、毎年、年が明けてから泡食ってやってる」
「どこもそうだよな、直前にならねーと動かねーの」
「俺もそうだけど、掛け持ち組が多いんだ、うちの学校」
 他校の生徒会室に入る機会など、滅多にあるものではないだろう。活動の流れや予算割、各行事の準備期間などを興味深く聞きながら、大樹はふと、智也の眼鏡に目をやった。
 さっきから何か引っ掛かると思っていたら、お互いの眼鏡が同じ銀の細フレームで、良く似ているのである。もしかして同じ品なのだろうかと、大樹は智也に眼鏡のブランドを尋ねた。
「ブランド? どこだろ、気にしたことなんかなかった。入学祝いに、ふーちゃんからもらったヤツだからさ」
「ふーちゃん?」
 ニヤリと笑いながら聞き返され、智也がかあっと頬を赤らめる。それを見た大樹は、どうやら愛しのカノジョからプレゼントされたものらしいと見当をつけたのもつかの間、ふと真顔になって「入学祝いに眼鏡?」と小声でつぶやいた。
 専門の量販店に行けば安価な眼鏡が手に入るものの、高校生には高い買い物である。それに「入学祝い」というものは、一般的には年上から年下に贈られるものだろう。
 ここから導き出される答えは、ただひとつ。
 大樹は良く使い込まれた感のある長机に頬杖をつき、何気なさを装いつつ、内心は興味津々で尋ねた。

 

-ラブストーリー

LOTUS extra 〜Crossroad〜<全3話> 第1話第2話第3話

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