幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(1)

   

「白波」への潜入任務を果たした松下たちだったが、もはや「発掘研」にかつての賑わいはなかった。

多くのメンバーは、危険すぎる任務に嫌気が差してサークルを去り、残った松下たちも、機密流出の道具という、元々の秘密基地発掘的なワクワクとは程遠い立ち位置にあることに、かなりの精神的な苦痛を感じていた。

松下が、かなり真剣にサークルの解散を考えていたある日、部室に侵入者が突入してきたのだった……

 

 柔らかな太陽の光と涼しい風が、体に注いでいる。手には小さなショベルがあり、木でできた立て札の根元に入れると、すっと簡単に入っていく。
 まるで、自分が掘るのを待っていてくれたのかようだ。
 五、六回掘り進めていくと、ショベルの先に、硬い金属の感触があった。
 身を屈めて、箱を手に取り、古い掛け金を外して、こじ開けてみると、中から、金色に光る物体が出てきた。
 最近の装飾品のようにけばけばしい光沢ではなく、むしろ沈み、くすんですらいたが、その落ち着いた色合いは、まさしく本物でしかあり得なかった。
「おいっ! 出てきたっ! 出てきたぞっ! 言い伝え通りの小判がっ!」
 松下は大声で叫びながら、開いた箱を高々と掲げた。すると、傍らにいた千夏の表情が、ぱっと明るくなる。
「ほ、本当だ……本当だっ! お、お父さんは嘘つきなんかじゃなかった! 本物の、『黒金』は、やっぱりあったんだっ!」
 千夏は、松下から手渡された箱を手に取り、感極まったように繰り返していた。
 目には涙が浮かんでいる。無理もない反応だ。
 今、松下が掘り出したのは、必ずしも優れた企業家とは言えなかった彼女の父が、最後の最後まで手放さなかった骨董品だ。
 それも、私利私欲のためではなく、価値判断や学術的裏付けをはかるために、借金のカタにすることを拒み続け、しかし結局は、家族の身の安全の話まで抵抗し切れず、売却せざるを得なかったという、いわく付きの品だ。
 そして、証明できる品が無くなってしまったことで、常日頃から、「自分は日本史を塗りかえるだけの宝物を持っている」と周囲に話してきた千夏の父親は、周囲からひどい嘘つきとして扱われることにもなった。
 千夏たちの身を守るため、歯を食いしばって汚名を着ることを選んだわけだが、だからこそ千夏は、その汚名を返上しようと、知恵と力を尽くしてきたのだ。
 そうした事情を知っているからこそ、松下も新藤もシュウも、休日を返上して、隠し場所に潜入し、宝物を掘り出していくという、危ない橋を渡ることにしたのだ。

 

-ノンジャンル