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ラブストーリー

LOTUS extra 〜Crossroad〜 <後>

   

「あーあ! よりによって姉貴と桜井センセが相手じゃ、オレらがノロケ負けするじゃねーかよ」
「ノロケ負けって」

LOTUS』 ―野々宮大樹&岩橋智也―
≪「LOTUS」「となりのプリンス」 番外編≫

Illustration:まめゆか

 

 オレとセンセのこと。
 堂々と言えねーのって、オレがヘタレだから……だよな。

 爬虫類カフェから、老舗カステラ店の喫茶室へ。
 このデートコースはこれで3回目だと思いながら、智也はアイスカフェオレをこくりと飲み込んだ文香を見つめた。大正レトロな店内の小さなテーブルの上に、それぞれがオーダーしたドリンクと、名物として名高いどら焼きの皮が乗っている。シンプルな皿の上、二つ折りにされたどら焼きの皮はまさに「和風パンケーキ」と呼ぶにふさわしく、このままでもほのかな甘みがあり、文香の幼い頃からの好物だった。
「さっきの子たち……青慧学園さん。夏服があんまりかわいくて、びっくりしちゃった」
「うん、俺もマジ驚いた」
「ふふ。セーラー男子だもんね」
 智也はバターを、文香は生クリームをたっぷり添えて、この店の看板メニューを堪能する。2人とも、3回連続で同じトッピングを選んでいた。
「青慧の男子って、毎朝あの制服を着るたびに、死ぬほど落ち込むんだってさ。野々宮が超ヘコみながら言ってた」
「野々宮くん?」
「ほら、あの眼鏡の」
「あ、うん、あの子ね。ともくんと同じ生徒会役員の、カッコいい眼鏡男子くん。ふふ、あの子、ともくんにちょっと似ているわ」
 思い出し笑いをする文香に、ジンジャーエールのグラスを手にした智也が「やっぱり眼鏡が似てる?」と返す。実際、同じブランドの眼鏡ではないかという大樹の問い掛けから、互いの「年上のコイビト自慢」が始まったのだ。
 智也は「似ているのは眼鏡だけだろう」と考えていたが、文香は「賢そうな雰囲気が似ている」という、なかなか繊細なインプレッションを述べた。
「それにしても、年上の彼女さんがいるところまで似ているなんて、なんだか不思議」
「あっち、10個上だぜ、10個上。しかも先生」
「これが青慧学園の先生だったら、確かにちょっと問題があるかもしれないけど……家庭教師の先生なら、わたしたちとそんなに変わらないと思うな。だって野々宮くん、小学生の頃から、ずっとその先生にお願いしているんでしょう?」
「そうらしい。ついでに、このまま大学受験まで面倒を見てもらうんだってさ」
「そうなの。頼もしい味方がいるんだもの、現役ストレート合格、間違いなしね」
 他校訪問の報告書を書くためにも、いったん学園に戻らなければならないからと、大樹たちが早めに引き上げたあと。智也はヒョウモントカゲモドキの水槽の前に陣取り、植木鉢の影でまどろむトカゲたちを眺める文香に、ことの次第を打ち明けた。
 度重なる訪問ですっかりおなじみになった爬虫類カフェのドアを開けるや、いきなり「ホントにかわいい!!」の大歓声で迎えられてしまった文香は、驚きのあまり出入り口で固まった。有名デパートのインフォメーション・ガールとして、日々大勢の買い物客を相手にしている文香も、このさすがに面食らってしまったのである。
 智也は智也で大樹が最も気にしているセーラー襟をむんずと掴み、黙って店の外へ出て行ってしまったきり、戻ってくる気配もなく。カメの放し飼いケージの前にひとり取り残された文香は、青慧学園の生徒たちに囲まれ、智也との馴れ初めをあれこれと聞かれる羽目になってしまったのだった。
「待ち伏せされたみたいで驚いちゃったけど、青慧のみんな、すっごくかわいかったね。知らなかったな、青慧の夏服があんなにかわいいだなんて」
「あいつらだってふーちゃんのこと、マジかわいいって驚いてた。さっすが有名デパートの花形店員は違うって」
「もう、ともくんがあれこれ大げさに言ったんでしょう。わたし、そんなに大したことないのに」
「大したことあるって。なんたってふーちゃんは、俺の自慢のカノジョなんだからさ」

 

-ラブストーリー

LOTUS extra 〜Crossroad〜<全3話> 第1話第2話第3話

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