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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

腐女子的妻の策略 前編

   

昼下がり、結婚2年目のゆきえは双子の兄を仕事中と知りながら呼び出す。
開口一番、怒りの愚痴のはじまりとも言える言葉を声高らかに発した。
ゆきえが兄を呼び出し愚痴るのは今に始まったことではない。
ゆきえの話に耳を傾けるまさゆき。
ただの愚痴が夫婦崩壊の危機になりそうな雰囲気へと変わっていく…

 

「ねえ、ちょっと聞いてよ!」

昼下がり、混み合う店内の窓際で、ひとりの女性が声高らかに言う。

「落ち着けって、ゆきえ。おまえの聞いてよでいい話だった試しがない。どうせ愚痴だろう? 聞いてやるからさ、少し声のトーン落とせ」

どうせいつもの事だと椅子の背もたれに寄りかかりながらスーツ姿の男が言う。
まだ残暑が残る9月、日中のスーツ姿は暑さとの我慢勝負といったところ、男は店員が持ってきた水を一気に飲み干しおかわりを要求、そんな様子を見ながら女性は次第に興奮が収まっていったのか、店員に静かな声でアイスコーヒーと注文をした。

「――で? 今度は何があった? 言っとくけど俺、まだ仕事中だからな。長居は出来ないぞ」

「わかっているわよ、お兄ちゃん。あのね……」

運ばれてきたアイスコーヒーをひと口飲み、前屈みになってゆきえは話し出した。
ロング丈のスカートにレースがワンポイントのTシャツにサンダル。
毛先に軽くウェーブがかかり化粧は人並み程度、29歳という実年齢からみると少し若く見える。
それは真向かいに座っている男も同じで、スーツ姿に髪をアップにしているが前髪を下ろせば大学生でも通るくらい。
ゆきえにお兄ちゃんと呼ばれているが同じ歳、双子の兄妹である。

「私、1週間程旅行に行っていたの」

「はるきを置いてか?」

「悪い? ちゃんと旦那の許可は貰ったわよ。年下でも夫だし」

「当然だな。で、はるきの許可を貰っての旅行なんだな?」

「そうよ。旅行は楽しかったわ。だからね、私も留守中はるき君には羽を伸ばしてもらおうと思ってたの」

「いいんじゃないか?」

「でしょう? 妻の鏡よね」

「いや、そこまでは言わないが……で、どうした。まさか、その優しさのしっぺ返しでも食らったか?」

「――そうよ、よくわかるじゃない。さすがはるき君の先輩ね」

「そりゃあな。おまえとはるきを逢わせたのは俺だし。結婚賛成して祝ったのも俺だし。けどな、ゆきえ。はるきは妻の目を盗んで悪さするような奴じゃないぞ」

「私もね、そう思っていたわよ。でもね、それって一般論的な視点でしか見ていないんじゃない?」

「――どういう、意味だ?」

怪訝そうな表情を浮かべ、ゆきえの兄、まさゆきも前屈みになって妹の持ってきた、多分厄介事の愚痴に違いない内容に耳を傾けた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

腐女子的妻の策略<全2話> 第1話第2話

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