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SF・ファンタジー・ホラー

ノエル 〜憧れを未来に託して〜 弐

   

日本だけれど住んでいた日本とは違うと気付いた郁巳は、若旦那と呼ばれていた男に事情を話す。
郁巳の話はとても現実離れをしていて俄かに信じがたいことばかりなのだが、名乗ってもいない名前を言われてしまっては信じるしかない。
若旦那の元で暮らす事になった郁巳は――

 

◆◇◆◇◆

部屋に案内をされ、部屋を暖めてくれる。
火鉢というものが置かれて暖められていく光景を見ると、昔の日本と言っても時代が結構絞られてくると思った。
言葉も武士っぽくないし、多分僕が生きていた平成の時代ともしかしたら結構近いんじゃないかと思う。
例えば、明治・大正くらい。
昭和ではないなと思ったのは、とめさんの髪型がまだ江戸時代劇なんかを見ているとよく目にする女性と同じ髪型だったから。

「大丈夫ですか?」

茶を持って戻って来たとめさんに声をかけられる。

「はい」

――としか答えようがない。
大丈夫かどうかなんて、今の状態ではわからないから。

「見た目は日本人なんだけれどねえ。言葉も通じるし。けれどなんか違うのよね。着ているものが違うからかしらねえ」

彼女の言いたい事、僕にはなんとなくわかる。
僕も多分彼女が思っている違和感と同じだと思うから。
多分ここは日本なんだと思うけれど、日本じゃないような気がするのは、着ているものというより外の光景が違うから。
そびえ建つようなビルもないし、走る車はレトロだし。
部屋も畳に障子なんて、久しく見かけていないし。
きっと僕が着物を着ていたらここの世界の人と大差なく、それ程の違和感は持たれないと思うんだよね。
――なんて事をひとりで考えていると、蔵で僕を起こした張本人が戻って来た。
彼は僕の真正面に正座をして座る。
僕ひとり胡坐をかいているのがなぜだか申し訳なく思えて来て正座をしてみるものの、正座なんて小学校の習字の時間以来なんじゃないかってくらい久しぶりで、瞬く間に足が痺れて座っていられなくなる。

「いいですよ、正座をしなくても。楽な姿勢で」

なんて言ってくれたので、僕は遠慮なく胡坐で座り直した。

「さて……聞きたい事が沢山あるのだけれど、いいかな?」

それは僕もなんだけど――と思っても言えなかったので、とりあえずどうぞとだけ答える。
もちろん、愛想笑いっぽい顔を見せて。

「そうですか、ありがとうございます。ではとりあえず先に名前とどこから来たのかを教えてもらえます?」

 

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