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SF・ファンタジー・ホラー

ノエル 〜憧れを未来に託して〜 参

   

明治時代にも日本国内で「クリスマス」という行事が行われていた事に驚いた郁巳だが、やっているのは在日の異国人や宣教師たちだけで、日本人がそこに加わる事はないという話を聞かされる。
郁巳がいた時代ではとても庶民的で知名度の高い「クリスマス」だが、時代が違うと受け入れ方も違う。
その裏に隠された日本人の心とは――

 

◆◇◆◇◆

「君も見たのですね、あの神々しいものを」

神々しい? もしかして、あのキラキラした光物がそう見えたのかな?
未来では当然のように飾られているし、街の樹木に飾り付けられてライトアップとかもされてゴージャスで……確かにこの時代で見たキラキラも目立ってはいたけれど、未来のそれらと比べたら神々しいとまではいかないな。
僕が生きていた時代のビルと比べるとまだこの時代の建物の高さは低く、その建物より高さを誇る教会はひと際目立つ存在だと思う。
僕が驚いたのは教会の方ではなく、平成の世では知名度抜群のクリスマスの飾り付けの方。
明治も中盤になれば教会のひとつやふたつ存在していて当たり前と思っていたけれど、クリスマスという行事がこの頃にはもう日本にあったという事の方で驚いた。
こっちの時期もクリスマスシーズンだったというわけ。
でも僕は23日の朝に蔵に入ったけれど、こっちでは少し違っていてまだ12月に入って間もない。

「とめさんから『クリスマス』だと聞きました。驚いた、この時代にクリスマスが存在していたなんて」

「私の知る限り、『くりすます』の歴史は古いようですよ。ただ、宗教弾圧が長く続いていましたので、日本人にはまだあまり馴染がないようです」

「そうか……長崎って言ったら島原の乱、天草四郎か」

「それは郁巳の時代でも有名な事柄として残っているようですね」

「そうだね。歴史の授業でも習うし」

「郁巳の時代まで語り継がれているですから、いいようないものを今も尚抱えている者もいます。今は宗教弾圧もありませんし、日本人も信者や宣教師たちと共にクリスマスを祝う事ができますが、まだ許されて日が浅いですかね……」

豊臣秀吉から始まり歴代の徳川将軍も宗教弾圧を続けていた事は知っている。
江戸時代なんて凄く長く続いていたから何百年もの間の事だよな。
宗之さんの話によれば、明治の時代になり鎖国が解かれ宗教への弾圧も無くなったけれど、日本人がキリシタンに関わる事は許さなかったらしい。
布教はしていいけど信者になっちゃダメって、それって布教している人は空しくならないかな~なんて思いながら話を聞く。

 

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