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SF・ファンタジー・ホラー

ノエル 〜憧れを未来に託して〜 四

   

宗之に紹介されたのはマルクとピエールというフランス人だった。
鎖国をしていた日本は世界より知識も技術も遅れているけれど、世界なら何か方法を知っているかもしれないという彼の気遣いだったけれど、郁巳は知っている……未来の時代でもその技術が存在しているという情報がないことを。
それでも何も言わずにいた。
そしてその帰り道、郁巳はあることに気づく――

 

◆◇◆◇◆

出迎えてくれたのはマルクさんという40代前半くらいで髭がトレードマークのようなフランス人、仕事は貿易関係をしているという。
フランスで仕入れた雑貨類を宗之さんが経営する問屋に卸しているんだそうだ。
中に案内されると、神父さんに似たような姿をしている人がいて、名をピエールと名乗ってくる。
外国人の歳ってよくわからないけれど、なかなかのイケメンで多分歳いっていても30歳前半くらいに思える。
とても気さくで、宗之さんが知り合いの郁巳さんと僕を紹介してくれると、挨拶の握手を向こうからしてくれた。

「珍しいです、村瀬さんが訪ねてくるのは」

話を切り出したのはマルクさん、しかも意外な程日本語が上手いから聞きとりやすい。

「商談でしょうか? でしたら私は席を外しましょう」

宗之さんに声をかけるマルクさんの言葉に、ピエールは仕事の話だと思ったらしく席を外そうとしたけれど、それを宗之さんが止める。

「仕事の話ではないのです。是非おふたりのお知恵をお借りしたいと思いまして」

「知恵ですか? 私は聖書を読み聞かすことくらいしか出来ない者ですけれど?」

優し笑みを浮かべながら言う姿を見て、神に仕える者ってイメージそのままで思わず見とれてしまう。

「我らに知恵とは、またそれも珍しい。何かあったのか?」

本題に入れるよう話を切り替えたのはマルクさん。

「ええ、まあ。彼の事なんですけれど」

言いながら僕を紹介する。

「彼の名は村瀬郁巳と言います」

「村瀬? 親戚か兄弟ですか?」

聞き返して来たのがピエールさん。
ピエールさんは、なんていうかとても丁寧な日本語を話すのに対し、マルクさんはかなり日本に馴染んでいるようで親しみやすい話し方をする。
敬語じゃないけど、「です」「ます」と語尾に付くとどうも堅苦しく感じてしまう。

「ピエール、いい勘をしていますね。彼、私の子孫なのだそうです」

一瞬にして場の空気が固まる。
雰囲気でふたりの異国人の言いたいであろう言葉が既に顔に出ているし。

「やはり、そういう反応をしますよね。私もそうでした。けれど、彼の話を聞いているととても嘘を言っているようには思えないのです。その理由のひとつとして、私がまだ名乗ってもいないのに私の名を知っていたり。私もお客様あっての商売をさせて頂いておりますので、一方的に名前を知られていても不思議ではないのですが……」

なんとかしてこの固まってしまった空気を緩めたかったらしく、宗之さんは一気に早口で説明をした。
すると――

「初対面なのに知っているような気がしたという事は、別に不思議ではありませんよ?」

というのがピエールさんの言葉。

「聞いた話だが、肉親というのは離れ離れになっていてもひと目見てわかる事もあるって話だ」

というのはマルクさん。
だけどそういう事ではないんだよ――という顔を僕らがすると、ふたりは顔を見合わせた後、小さな息を吐いて僕らを交互に見た。

 

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