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SF・ファンタジー・ホラー

ノエル 〜憧れを未来に託して〜 伍

   

明治時代、まだクリスマスは庶民的に普及もしていなかったし、過去の宗教弾圧の恐怖から踏み込めないでいた。
そんな中でクリスマスを体験しようと動きはじめた宗之と郁巳のふたり。
このふたりの作戦とは?
そして郁巳は元いた時代へと戻れるのだろうか…

 

◆◇◆◇◆

「それはなんですか?」

紙と鉛筆を渡された僕は、記憶の中にある『クリスマス』にちなんだ物を描きはじめた。
先に言っておくけど、まったく絵心というものはなく、まあせいぜい小学生くらいの画力なものだから、あとせめて色を塗れたらもう少しはマシなものを見せられたかもしれないけど、そこまで要求してもいいものかと考えてやめた。
ちなみに、明治時代後半には鉛筆が存在していたということを、手渡されてはじめて知った。
書くものと言った時、てっきり筆と墨汁を渡されると思ったから、本当に驚いたよ。

「これはツリーというもので、もみの木。この木にこういう飾り付けをする。海外では、このツリーにプレゼントを飾ったり置いたりするみたいだよ。日本では、こういう靴下の大きいのをベッドとか布団の枕元に置くと、サンタクロースがプレゼントを置いてくれるんだ。ちなみに、いい子にしていないとくれないから、この日が近づくと意識していい子でいようとするんだ……」

説明をしながら描いていると次第に子供の頃を思い出してきて懐かしくなってくる。

「マルクさんのお屋敷にあったあの緑の木に飾ってあったもの、あれがツリーというものだったんですね。もみの木というのですか。日本で言うと杉の木に似ているでしょうかね」

――と返されても杉の木がすぐ思い浮かばない僕は笑って誤魔化す。

「サンタクロースとはなんですか? なぜ日本は靴下なのです?」

なぜ靴下なのかって……なんでだろう? 聞かれるまで疑問にも思わないくらい、未来の日本では常識なんだよな。

「サンタクロースというのは、こういう感じの髭つけて、こういう赤い服を着て……」

記憶の中のサンタクロースを描くけど、あまり似ていない。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

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