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SF・ファンタジー・ホラー

妖精たちの贈り物 <ほし>

   

「サンタってのはな、クリスマスの晩に煙突から入ってきて子供を片っ端から食い殺す、おっそろしい悪者なんだぜ。子分の小鬼を引き連れた、悪の軍団だ」
「悪の軍団!!」

妖シリーズ補完編
妖精たちの贈り物 ~ほし~

Illustration:まめゆか

 

 一番目の仔ブタはわらで家を作り、そこに住むことにしました。やがてオオカミがやって来て、ドアをたたきました。でも、一番目の仔ブタはドアを開けません。怒ったオオカミは、大きく息を吸い込み、わらの家をふうっと吹き飛ばしました。そうして、一番目の仔ブタをぺろりと食べてしまいました。

【三匹のこぶた】

 自慢じゃないが、ウチは結構デカい。
 常連客からは、「隠れ家風の邸宅レストラン」と呼ばれている。
 ちょっとした公園にも匹敵する広い敷地には種々のバラが咲き乱れ、クラシカルな洋館風の建物が東寄りの中央に陣取っている。駐車場を兼ねて広めに取った前庭が南側にあり、西が中庭、北が裏庭という単純な構成だが、バラにはこういう位置取りがいいらしい。
 オレの女が思い切って手を入れてから、ウチはレストランというより、まったくのバラ園になった。なんせ、生垣から中庭、エントランスのアーチに至るまで、徹底したバラ尽くしなのだ。シーズン中ともなると、バラ園のオマケとしてレストランをやっているような気分になってくる。
 もちろん、オレの女がそれでいいなら、構わない。
 この邸も、正確に言えばオレたちのカネで建てたわけではない。オレの女と関わりの深い高橋の奥さんが、遺産の生前分与のようなかたちで、驚くほど気前のいい金額をポンと出してくれたのだ。
 サヨリ女にも同じようにしているのだから遠慮はいらないと言われ、オレたちはありがたく受け取ることにした。そうして女たちが額を寄せ合って間取りと内装を考え、オレは厨房機器を選び、一階が店舗で地下が倉庫、二階が居住スペースという「オレたちの城」が出来上がった。
「ねえ、おじちゃま」
「なんだ? 子供はもう寝る時間だぞ」
 寝る前の薬も、歯磨きも済んでベッドに納まったちびライオンが、ルームライトを消そうとしたオレを呼び止める。時間は21時を少し過ぎたところで、これからようやく、オレの晩酌タイムだった。もう酒は入っているものの、ちびライオンの世話を焼きながらでは、とても飲んだ気にはなれなかった。
「ぼく、ここにひとりでねるの?」
「まさか、おまえさん、まーだママと一緒に寝てるのか?」
「ねてないよ!」
 からかうように言ってやれば、あごの下までしっかり掛け布団に埋もれたちびライオンが口をとがらせる。クルマのなかでたっぷり昼寝をしたせいで、寝つけないのだろう。子供ひとりが寝るには、広すぎる部屋にいるからかもしれなかった。
 居住スペースになっている2階には、大小合わせて5つの部屋がある。オレたちの寝室に娘の寝室、オレの書斎とは名ばかりのガラクタ置き場、今やクローゼットと化している予備室。そのなかで最大の広さを誇るのが、このバスルームつきの客室だった。
 最初はセミダブルのベッドが2台、場所ふさぎ程度に置いてあるだけだったが、オレたちの娘が大火傷を負い、高橋の奥さんたちが泊まり込むことになったときにいろいろと買い足した。
 同サイズのベッドをもう一台追加し、相応の応接セットを入れ、サイドボードや小型冷蔵庫、物書き用のカウンターテーブルも置いた。ちょっとしたホテルの、スーペリアルームくらいの設備はあるだろう。実際、生死の境をさまようオレたちの娘を救うため、ここに高橋の奥さんたちが半月も泊まり込んでいたときは、オレはプチホテルのコック兼コンシェルジュにでもなったような気分だった。
 部屋を整え、厨房に立ち、女たちの御用聞きをして包帯やら脱脂綿やらの買い出しに行く。梅澤のじいさまの送迎をするついでに、文句ひとつ言わずに留守番をしている、ちびライオンの様子も見てやる。だが、そうやって息つく間もなく動いていたほうが、気分的にもラクだった。

 

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