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SF・ファンタジー・ホラー

幻妖奇譚<1> シンデレラ

   

妖しの世界で語られるおとぎ話は、少し変わっています。

 

 大臣が、ガラスの靴が履ける娘を捜しているというのは、国中のうわさになった。
 これを聞いたシンデレラの継母は、おおよその事情を見通すことができた。
 意地悪な継母も魔法は使える。
 この前の舞踏会に、豪華な馬車で輝くばかりの乙女が現れたこと、そして急に帰ってしまった理由が分かったのだ。
 とうとう、シンデレラの住む小さな村にまで大臣の一行が来ることになった。
 これこそ、自分の本当の娘を王子の嫁にする願ってもないチャンスだ、と継母は考えた。
 やがて大臣が継母の家に来た。
 継母の本当の娘は靴が履けなかったが、最後にシンデレラが履くと、ピタリと足が入った。
「おお、ガラスの靴が入った。あなたこそ探していた人だ」
 大臣は大喜びした。
 そこへ、継母が口を出した。
「おそれながら大臣さま」
「なんじゃ?」
「その靴が履けた者は、王子様のお后になれる、ともっぱらの噂でございますが」
「そのとおりじゃ」
「この前の舞踏会には、えもいわれぬきらびやかなドレスを着た、とても美しい娘が来ておりましたが、あの娘を探しておられるのでございますね」
「さようじゃ。国中を探して、やっと見つかったわ」
「しかし、おかしいとは、思われませんですか」
「何がだな?」
「あの日、あの娘は、真っ白な四匹の馬に引かせた、宝石で光り輝く黄金の馬車に乗っておりました」
「さよう」
「あのような馬や馬車なら、すぐにでも見つかるはずでございましょう」
「それが見つからないんじゃよ」
 大臣は困った顔をして続けた。
「あの馬や馬車は、王侯貴族でしか持ちえないもの。すべての貴族に聞いてみたが、誰も知らないのじゃ」
 大臣は、シンデレラが履いているガラスの靴を指さした。
「手がかりは、そのガラスの靴しかない」
 継母は、得意気に言った。
「馬や馬車は見つかるはずがありません。あれは魔法で作ったものでございましょう」
「なんじゃと。魔法、とな」
「はい、おそらく、白い馬は白ネズミ。馬車はカボチャではないでしょうか。きれいなドレスも、もちろん魔法」
「それは重大な事じゃぞ。国内で魔法を使うのが許されているのは、王様に仕えて未来を占うマリーン殿だけ。他に魔法使いがいるとなると、これは大事じゃ」
 継母は、薄笑いを浮かべた。
「このガラスの靴が合ったということは、シンデレラが、もしかしたら魔法使い……」
「ううむ……」
 大臣はシンデレラを見た。

 

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