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歴史・時代

海舟こぼれ話(1) 夕顔

   

峰の嵐か、松風か、哀しき人の笛の音か。
平家物語外伝です。

 

 幕末の偉人の勝海舟は膨大な文書を残している。
 『勝海舟全集』としてまとめられているほどである。
 その中でも特に、座談を記録した文章は、実際に勝海舟の話を身近に聞いているような迫力がある。
 幕末のエピソードを、勝海舟本人から聞いているようなものなのだ。
 ただおしむらくは、幕末、明治維新の話題ばかりが記録として残っている。
 その裏にある、膨大な知識、教養、そして独特の剽軽さ、といったものは、彼の全集からはうかがい知ることができない。
 それらを今日に伝えているのは、深川の由緒ある料亭〈小吉〉に残された、お静という創業者が残した日記だけである。
 その日記によると、勝海舟は、あるときは大川端で夕涼みをしながら、あるときは雪の降り積もる夜に炬燵で熱燗を飲りながら、ポツリポツリと昔話をしたということだ。
 ここに記すのは、そんな話の一つである。

 勝海舟とお静は、永代橋から大川を眺め下ろしていた。
 昼間の熱気がさめやらぬ宵、橋には、涼を求める人が多かった。
「今日は、本当に暑かったわねぇ」
「そうだな」
「こういう暑い日の夜は、怪談話なんかどうです。最近流行っているんですよ」
「そうかね」
「ええ。このあいだも、私の知っている大店で、百物語があったんですよ」
「ほほう、おもしろそうじゃないか。どんな話が出たんだい?」
「なにいってるの。話すのは御前の役目。何か話して下さいな」
「分かった、分かった。こんな話があるんだが……」

***

 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
 驕る平家も、春の宵の夢から覚め、都落ちしなければならなくなった、その夏のことである。

 

-歴史・時代

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