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幻影草双紙1〜高速道路にて〜

   

 夏休みや年末になると、高速道路の渋滞がテレビに出ます。
 あの車、ひとつひとつの中に、さまざまな人生があります。
 それを書けばネタに困ることはないでしょう。
 ただ、それを書く力量があるかどうか、これが大きな問題でして……。

 

 都市部を離れると、車が極端に少なくなった。
 大谷憲一は、イタリア製のスポーツカーを、法定速度プラス30キロで走らせていた。
 この車としては、物足りない速度である。
 だが、それでなくても目立つ赤色の外車だ。
 どこかで警察が目を付けているかもしれないのだ。
 安定したタイヤグリップがある。
 エンジン音が心地よい。
 大谷憲一は、コンピュータ関連で財を成した若者である。
 彼はコンピュータが大好きであった。
 特にプログラム。
 パスカルからCへ進み、その機能に感動した。
 高級言語に飽き足らなくなった大谷憲一は、アセンブラを夢中で勉強した。
 そして、画像を高速で描写するアルゴリズムを編み出した。
 それがゲーム会社の目にとまった。
 彼は、次のステップへ進んだ。
 画像処理から始まり、暗号化システム、ウイルス対策ソフト、などなど。
 彼の発明したアルゴリズムは、コンピュータの基幹部分で必要不可欠なものとなった。
 特許料で、大谷憲一は大富豪となった。
 ちょうど三十才のときである。
 マスコミは、そんな彼を、時代の寵児としてもてはやした。
 六本木の高級マンションを買い、連日パーティーを催した。
 ガールフレンドは、アイドル歌手や女優。
 車は、赤色のイタリア製スポーツカー。
 子供の頃から欲しかった車なのだ。
 もちろん即金で購入したのだ。

 

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