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幻影草双紙2〜易者〜

   

 当たるも八卦、当たらぬも八卦、と言います。

 

 岐阜の北部にあるその町は、江戸時代には譜代大名の飛地であった。
 明治になると、産業の中心から外れていたため、発展がなかった。
 それで今日まで、武家屋敷の区画がそのまま残る場所となったのである。
 つい最近までは、昔のままの荒れた状態で放置されていた。
 武家が住んでいた区画というだけでは、整備して観光誘致をするには弱すぎたのだ。
 もうひとつ、何かがほしい。
 ところが、この町が北条早雲の生地である、という古文書が見付かった。
 これを観光の目玉にしよう。
 役所が重い腰を上げ始めた。
 北条早雲は、戦国時代を拓いた英雄である。
 家系も分からない無名の者だが、実力だけで天下を取ったのだ。
 豊臣秀吉と同じようなパターンである。
 ただ、北条早雲の方が百年ほど早い。
 頭のいい者が、ここに目を付けた。
〈秀吉の百年前に、もっと凄い奴がいた!〉というキャッチフレーズをぶち上げたのである。
 歴史学者からはクレームが出た。
 北条早雲の前半生は分かっていないのだ――。
 新しく発見された古文書は偽物にちがいない――。
 もちろん、関係者がそんなクレームに耳を貸すはずはない。
 資金を調達して、町の整備を始めた。
 あと五年もすれば、その資金が十倍、百倍になって戻ってくるであろう。
 大河ドラマや映画のロケ地にもなって……。

 

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