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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(13)

   

豪華客船を突如襲った振動に、会場は大混乱に陥った。

今日子が予め備えていた装置によって、空からの脱出に成功した松下たちは、二谷の指揮する艦に救出されることになるのだが……

 

「う、うわあああっ、何が、何が起こったんだ!」
「ひっ、ひいいっ!」
 二度、三度、四度。
 場内に絶え間なく爆発音が響き渡ると、観客席にいるVIPたちが途端にパニックを起こし始めた。
 船や飛行機の中など、地に足がついていない場所での衝撃の恐怖は、陸上のものとは次元が異なる。
 実社会では修羅場を潜り抜けてきたとは言え、海の経験のないVIPたちが混乱してしまうのは、むしろ当然と言えた。
「落ち着いてっ、落ち着いて下さい。この船の丈夫さは、軍艦以上です!」
 リングアナが、先ほどとは比べ物にならないほどの真剣さで、落ち着くように叫んでいる。
 しかし、絶え間なく衝撃と振動に揺さぶられ、轟音に晒されながら、冷静になれというのも無理な話だ。
 悲鳴こそ上げずに済んだものの、松下も軽いパニック状態に陥っていた。
「来てっ、早く!」
 いち早く冷静さを取り戻したのは、今日子だった。
 脚の力が入らないほど混乱している新藤と千夏の手を掴み、会場の出口に向けて、風のように駆けていく。
 松下も三人に続く形で、リングを降り、走り出す。

ガシイッ! バシーッ!

「く、くあああっ!」
 今日子が脚で蹴り開けたテラスの分厚いドアを通り抜け、さらに先に進もうとしたところで、自分のはるか頭上にあるアクリル板が、激しい音を立てて破れた。
 鉄球めいた物体が反対側の壁にめり込むのとほぼ同時に、バラバラになったアクリルの破片が降ってくる。
 硬度的には、ガラスよりもはるかに危険な代物の襲来に、松下は叫んだ。
 叫びつつ、手足をぶんぶんと振った。
 空手着が、既製品よりもはるかに丈夫だったこと、そして、「藤原流」の体裁を整えるために、一通り空手の動きを覚えておいたことが幸いした。
 危険な飛来物は、ことごとく空手着によって払われ、松下の肉体までは達しない。
 もっとも、敵弾が船内に入ってきたことで、混乱は一段と深刻なものになった。
 分厚いドア越しにも、テラスや客室から、悲鳴や物が破壊される音が容赦なく聞こえてくる。
 各部屋の中がどうなっているか、想像したくもないぐらいだ。

 

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