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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(19)

   

どうにか「龍人」たちとのトレーニング勝負に勝った松下たちは、奥の部屋で新藤と再開を果たす。

だが、レビンに突き付けられた最後の課題は「格闘」。今までの「遊び」とはまるで違うきつさの攻撃に、松下たちは激しく追い詰められていく……

 

「た、助かったのか、俺たちは……」
 松下は、その場にへなへなと座り込んで、呟いた。
 床に満ちていた粘液は、海岸から潮が引いていくように消え、もはやほんのわずかなぬめりすら残っていない。
「運が、良かったとしか言えないわね」
「攻撃自体は褒められたものではないが、結果としては最良だろうな」
 松下と同じように床に座り込んだ、千夏とフィステンが、笑顔を見せて言った。
 二人とも、脂汗でどろどろになっていて、余力などかけらも残っていないことは、一目で分かる。
「ただ、ちょっと貰い過ぎたかしらね」
 容赦のない連続攻撃を受け、死体のようになっていた今日子も、むくりと立ち上がった。
 顔は腫れていないが、首から下は、打たれていないところはないぐらいに消耗している。
 裏庭のガレージから自宅に戻るにも、苦労しそうな有様だ。
粘液が退ききったところで、正面の扉が開いた。こうこうとした照明が、松下たちの瞳孔を撃つ。
「ぬうう……っ!」
 松下は、いったん目を閉じかけてから、叫んだ。
 視界の正面に、縛られた新藤の姿が映ったからである。
 松下は、縄を解き、新藤を抱きかかえた。
「新藤っ、おいっ、しっかりしろっ、新藤!」
「うっ、くく……っ」
 松下が耳元で叫び、激しく揺さぶると、新藤は弱々しく呻いて、目を開けた。
 良く知った者の顔に、一瞬安堵の表情を浮かべた新藤だったが、大事なことを思い出したかのように、厳しい顔つきになった。
 有無を言わせぬ口調で、新藤は声を振り絞る。
「なっ、何故、僕を助けたんだっ。悪い条件じゃなかった。死ぬわけじゃなかったんだ」
「おいおい、そうじゃねえだろっ。俺たちに、お前を見捨てるなんて選択肢はねえぞっ」
 新藤の意外な反応に、松下は声を荒げた。
 だが、新藤は、首を激しく横に振り、普段決して見せない強さで、松下を諭した。
「『ダメ』なんだよっ、それこそが相手の狙いなんだっ。とにかく、今は退いてくれっ。僕のことを考えていられる余裕なんて、もう……」

 

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