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SF・ファンタジー・ホラー

妖精たちの贈り物 <ゆめ>

   

 あの小生意気な娘は、サヨリ女のアクセサリーだった。
 サヨリ女の持ち歩く、巨大なアクセサリーだったのだ。
 たまたま、歩いて喋って、人間のようにメシを食うというだけの。

妖シリーズ補完編
妖精たちの贈り物 ~ゆめ~

Illustration:まめゆか

 

 それを見た三番目の仔ブタは、暖炉に大きな鍋をかけ、水をいっぱいに入れて、火をどんどん焚きました。オオカミが煙突を降りて来ると、三番目の仔ブタはさっとふたを取りました。すると、オオカミは煮立っている大鍋に落ちてしまいました。

【三匹のこぶた】

「今日の霜降りは、なかなか美味いぜ」
 火加減を見ながら、串刺しの肉を丁寧にあぶる。
 下ごしらえに気を遣っている分、焼き上がりは上々だった。
「肉と脂のバランスが絶妙だ。さほどの手間はかかってねェけど、本日のスペシャリテってとこだな」
「ええ、最初に頂いた肩肉も美味しくて」
 寄り添うようにして立つオレの女の、華奢な白い手首に細いブレスレットが光っている。これから気温が低くなると、そんなささやかなアクセサリーさえ、ひどく重たそうに見えるのだ。朝から庭に出ずっぱりで遊んでいられるのも、今年はこれが最後になりそうだった。
「よし、このあたりでいいか。皿を取ってくれ」
「はい」
「ソレと、あとそっちにあるヤツ、あとで繭たちにも食わせろよ。アンコールが腸詰めばっかりじゃ張り合いがねェ」
「ふふ、あなたのお作りになる腸詰め、美味しいんですもの。もし余ったら、百合子さんに少しお裾分けを……そうだわ、梅澤先生にブーダンを差し上げて下さる? ノワールのほう」
「ああ、用意してあるぜ。じいさまの好物だからな」
 店ではパテとして出すことが多いが、ブラッドソーセージと呼ばれる血入りの腸詰めは、梅澤のじいさまの好物だった。焼くとひとかたまりの炭にも似た黒さになることから、「ブーダン・ノワール」とも呼ばれている。これにつけるタレは、タレと言うよりソースかピューレに近く、リンゴを使うのが基本ルールだった。
「いいぞ、運んでくれ」
「あなたも一段落なさったら、あちらでひと休みなさって。ラップサンドがなくなってしまいますわ」
「おまえさんの焼く蕎麦粉のガレット、美味いからな」
 サンドの取り置きを頼むと、オレの女は柔らかな微笑と共にうなずき、銀の大皿を捧げて中庭のテーブルへ戻った。それを見送り、オレはふと、作業台に目をやった。
 使う木材にまでこだわったキャビネット仕様の大きな作業台には、夏リンゴらしい爽やかな甘味を持つ、極早生の青リンゴが3つ並んでいる。あとでちびライオンがむきたがるだろうと、ブーダン用ソースの残りを出しておいたのだ。
 その隣で静かに光を弾いているのは、値段の割に使い勝手の良い、掘り出し物のアウトドアナイフだった。用途多彩なアウトドア系のなかでも調理に特化したものらしく、オレの愛用シェフナイフよりひと回り小さい。刃に厚みのある、ガッシリした作りは三徳より洋出刃に近く、野外用なら悪くなかった。無論、厨房でもそれなりに働いてくれるだろう。
「…………機会があったら、坊主にくれてやってもいいんだが」
 作業台から取った、洋出刃型のナイフを手のなかでくるりと回し、刃を軽く拭いて腰の革製ホルダーにしまう。このナイフは、モノは違えど、ちびライオンに贈った子供用包丁と同じ職人が鍛えたものだった。海やキャンプ場ではなく、自宅の庭でのバーベキューなら厨房から相棒を連れ出せば良いのだが、「ごっこ遊びは小道具にこだわってこそ」というのが、オレの近年の信条だった。

 

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