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SF・ファンタジー・ホラー

幻妖奇譚<4> 海坊主[上]

   

奇妙なモノ、幻妖なモノが出現することもあります。

 

 この文章は、正味三十分で書き上げた。
 朝起きて、アパートの階段を下りて新聞を取って部屋に戻り、それから、一気に書き上げたのである。
 新記録の早さだ。
 書けるうちに書いておかねばならない、という虫の知らせが私を駆り立てたのである。

 発端は小学校の頃にさかのぼる。
 だが、〈それ〉を知ったのは二年前、まだ私が商社に勤めていて、ロンドンに住んでいたころのことである。
 ロンドンに吉川君が訪ねてきて、話を聞いたのであった。
 吉川君は、浅草で老舗の呉服屋で生まれ育ち、その呉服屋を継いだ。
 彼とは小学生時代の同級生であるが、お互い別な道に進み、地理的にも離れてしまっていた。
 だが、馬が合うというのだろうか、細くはあったがつき合いがとぎれることはなかったのだ。
 そして二年前、吉川君夫妻が、世界旅行の途中にロンドンへ来たとき、再会したのである。
 ロンドン見物をした後、ショッピングの包みを開いている夫人を部屋に残し、我々はホテルのバーへ入った。
 ひさしぶりに見る旧友は、いかにも老舗の店の主人という、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
 だが、話を始めれば、すぐに小学校の子供時代に戻るのであった。
 いろいろな思い出話をしているうちに、吉川君が言った。
「海坊主のことを覚えているかい」
「え、なんのことだ」
「覚えていないかなぁ。庭で見たじゃないか。ほら、ミンのミンのミンだよ」
「あぁ」
 私は思いだした。
 吉川君の家の庭で遊んだ日々が記憶によみがえり、怪異な形相の人物が思い出された。
「そういえば、海坊主そっくりな男がいたよな」
「うん。あの海坊主がまた来たんだ」
「え?」
「実はな……」
 そう言って吉川君は話を始めたのであった。

 

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