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ノンジャンル

幻影草双紙13〜カサブランカ〜

   

 君の映画に乾杯。

 

 彼は、大統領執務室の椅子に座ると、目を閉じた。
 そして――。
(やっとたどり着いた)
 と嘆息した。
 それはそうであろう。
 世界最高の権力者になったのである。
(売れない俳優から出発して、ここまで来たんだ……、頂点へ……)
 もともと、彼は映画俳優であった。
 俳優としては、せいぜい三流。
 ただ、妙に交渉が上手である、という取り柄があった。
 それで、俳優組合の調停役から始まり、政界に転身して、ついにはカリフォルニア州知事になった。
 こうなると野望はとどまるところを知らない。
 大統領選に出馬し、みごとに勝ったのである。

 大統領になった彼は、ひそかに考えていた計画を実行することにした。
 それは、『カサブランカ』のリメイクを、彼の主演で撮ることである。
 これが、彼を大統領にした原動力であった。
 そもそもは、『カサブランカ』の主役をハンフリー・ボガートに取られたことが、運命の分かれ道であった。
「奴は演技が下手だ。ハンフリー・ボガートにやらせろ」
 その結果、映画は古典となり、ハンフリー・ボガートは名優の名をほしいままにした。
 一方彼は、B級映画専門の俳優に留まってしまったのである。
(演技が下手だ、と言った奴らを見返してやる!)
 大統領でいられるのは、最長八年でしかない。
 その後は、『カサブランカ』をひっさげてハリウッドへ戻ることを考えたのであった。

 

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