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ラブストーリー

もういちど、すきって言ってもいいですか 3

   

カレの指があたしのふくらはぎにそっと触れる。

筋肉の隆起を確かめるようなその指使いに、あたしの喉は声にならない吐息を漏らした。

――なんて、いじましい妄想を10年も続けていれば、少しは女っぽくなれたかしら。

本当のあたしは、あのことにこだわりすぎて一歩も前に進めない。

けど。

銀色のボールがあたしの中の、小さな抜けないとげに引っかかった想いを引きずり出していく。
それは甘くて、はじけて飛んでいくような快感で――。

 

「よろしくお願いします」
「こちらこそ、S高主将の藤井先生が来てくれてすごく心強いっす」
「期待しないでくださいね。もう部活引退してから全く蹴ってませんから」
「いや、俺も高校で辞めてから、趣味でたまーに蹴ってたくらいで全然。どうぞ、よろしく」
 鼻息も荒く橋口先生が言うと、その隣に立った勝俣先生がうんうんと腕組みしながら頷いた。
 この勝俣という人はゆるく立たせた金髪とピアスのせいで、出で立ちは大学生の軽音サークルあたりに居そうなチャラさなのに、この間の飲み会でもものすごく真面目な話し方してたっけ。
「藤井先生、かなりしつこく大鳥先生に口説かれたんだって?主任の西沢先生が本校来たときに笑ってたよ。運営部にセクハラで訴えそうだって。まあ勘弁してやってよ」
 笑いながら大鳥先生の肩を叩いているのは伊東先生。
 ごつい体つきで声も太く、表情を見なかったら怒ってるのかと思うくらいに語気が強い。
 大きくて通る声に身体から出される威圧感はコート上でも役に立つ。こりゃキーパー候補だ。
 残りのメンバーでボールの扱い方や走り方見て、それから大まかなポジション決めかな。
 フットサルだとフィールドが四人だから、トップに一人、中盤二人、ゴール前に一人ってとこか。男の人にサイドライン走ってもらって、あたしがポストプレーをするかそれとも。
 そこまで考えて、あたしははっと息を飲む。

 

-ラブストーリー

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