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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録1 第1話

   

 記録1《立ってるものは親でも使え》

 偶然知己を得た数学者、B氏、T氏をモデルにしています。
 それに、高校時代の数学の先生も造形に加えています。

 

 榊原徹雄は、晩酌をしながら、ぼんやりとテレビを見ていた。
 家族と食事をするのはひさしぶりのことであった。
 ひさしぶりの団らんではあるが、リラックスはできない。
 頭の中では、気になることが渦を巻いている。
 テレビの中では、美人として有名なアナウンサーが、隣の男に話しかけている。
「ええ? 桜小路先生、数学は暗記じゃないんですかぁ」
「もちろん違いますとも。暗記だと思うから数学が嫌いになるんです」
「私も嫌いでしたわぁ」
「数学はね、楽しいものなんですよ」
 桜小路は、身振り手振りを添えて、おもしろおかしく話していた。
 警視庁の警部で、生まれつきの硬派である榊原は、テレビに出て媚を売る文化人を苦々しく思っている。
 それでなくてもこのところ、担当する事件の捜査が進展せず、機嫌が悪いのだ。
 今日、早く帰宅できたのは事件が解決したからではない。
 逆に、何も進展がないために、することがなくて帰ってきたのだ。
 頭の中で渦を巻いているのは、このことなのである。
「数学は、純粋に頭で考えて、隠されたものを発見する、新しいことを創造をする……」
「はぁ?」
「そこに喜びがあるんです」
「そこですか?」
「そこです」
 テレビの中で話しているのは、平成錦秋大学教授の桜小路悟一であった。

 

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