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ラブストーリー

LOTUS 〜Under Lover〜 <前>

   

「このままでもいいんだわ。稔ちゃんのカッコ良さは、お母さんとみっちゃんが知っていればいいことだもの」
「そうね。そうかもね」

LOTUS』 ―稔×瑞穂―
≪光輝*高等部2年生*5月≫

Illustration:Dite

 

 俺はバカだし、トリアタマだけど。
 みっちゃんが生まれたときのことは、よーく覚えてる。
 父さんたちにねだりまくって抱っこさせてもらったら、
 みっちゃんが俺の顔を見て、それからふにゅって笑ったんだ。

 愛妹の瑞穂が無事に中学受験を突破したとき、稔は、それを本人の何倍も喜んだ。なかなかの大学進学率を誇る青慧学園に、みごと首席で合格したのだ。これで瑞穂の将来は決まったも同然、よほどのことがない限り、スムーズに家業の歯科医院を継ぐだろう。
 母方の祖父や両親と同じように、歯科医になりたい。
 それは瑞穂の、幼い頃からの夢だった。
 夢というより、それ以外の発想など持てなかったのだろう。ごく幼い頃から、そうなって然るべきだという雰囲気のなかで育ってきたのである。よって瑞穂は周囲の期待を素直に受け止め、「大きくなったら歯医者さんになりたい」と公言してきたのだった。
 そのための第一ステップが中学受験であり、瑞穂は最初の試練をしっかりとクリアした。両親はもちろん、両方の祖父母たちも胸を撫で下ろしたことだろう。
「いやー、良かった良かった、本当に良かった!」
 学園から手渡された合格通知を広げて、稔がにっこり笑う。
 母親の弘子もつられて微笑みながら、3年前と同じように、合格通知を神棚に上げた。
「俺ほんっとにゼンゼン心配してなかったけど、やっぱこうやって合格通知をもらうと、じーんと来るよなぁ。もう俺、自分のときの100倍くらい嬉しい!!」
「お母さんも嬉しいわ。我が家では2回目の中学受験だから、少しはリラックスできるかと思ったけど、そんなことはないのね。もう朝から心配で心配で……あなたたちが笑顔で帰ってきたときは、本当に嬉しかった。稔ちゃんのときと同じくらい、嬉しかったわ」
「へへっ」
 合格祈願の願ほどきはまた日を改めて、いつもの神社に参拝するとして、とりあえずは神棚に居並ぶ三柱に礼を述べる。塾や学校に結果報告をしたり、両方の祖父母に知らせて喜び合ったりしているうちに時間が過ぎ去り、ふと気付けばもう9時を回っている。深々と拝礼した後、親子はふと、互いの顔を見つめた。
「稔ちゃん、本当にありがとうね。みっちゃんが無事に合格できたのも、みんな、稔ちゃんのおかげよ」
「なぁに言ってんだよ、母さん。みっちゃんの出来がすっごくいいからだって。本当はさ、青慧よりもっとレベルの高い学校だって、余裕で狙えたんだろ? さっすが、うちのみっちゃんだよな」
「稔ちゃん」
 生さぬ仲でありながら親子のあいだに感情のもつれがないのは、継子をしっかり愛そうとする弘子の努力以上に、稔の素直で明るい性格に寄るところが大きかった。稔が弘子に良く懐き、妹の瑞穂を大切にするからこそ、弘子も稔を安心してかわいがることができたのである。
 もしかしたら、稔は努めて明るく屈託なく振る舞っているのかもしれない。そう思うと、弘子は切ないほどに「夫の連れ子」が愛しくなってしまうのだった。

 

-ラブストーリー

LOTUS 〜Under Lover〜<全2話> 第1話第2話

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