幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

その果ての刃 4

   

2日目、意外と早い時間に仕事が終わったが帰宅せず警察署内で仮眠を取る事にした湯江刑事、そんな彼女に助けを求める若い所轄の刑事が彼女の睡眠を妨げる。
担当刑事と連絡がつかず、若い刑事が持ちこんだ件を担当することに。
二人目の被害者を知る女性からの電話だった。

 

 戻った頃は既に夜という時間で、捜査会議用に使っている会議室にいる刑事もまばら。
 上司に家宅捜査をした結果を報告すると、今日のところはこれで帰っていいと言われる。
 家庭を持っている芳本刑事はその言葉に有難いとだけ返してさっさと会議室を出ていく。
 私は少し焦ってその後ろ姿を追った。

「待ってください、先輩。井沼さつきの件はどうするんですか?」

 私の問いかけにチラッと腕時計を見る。

「この時間、人を訪ねるのに常識のある時間だと思うか?」

 言われて会議室にある壁掛けの時計を見上げる。
 ここに戻った時はまだ8時にはなっていなかったけれど、今は9時を過ぎようとしている。

「普通なら、非常識と言われるかもしれません。でも、人が3人も殺されている事件ですよ? 多少はいいのでは?」

「住民の不安を考えれば、一般常識なんてクソくらえと言いたいところだが、加害者や被害者の関係者に話を聞くと言うのは、結構デリケートな事なんだよ。些細な事で口を閉ざされてしまう。言っただろう? 刑事という仕事は人に好かれ好感もたれるより、煙たがれ嫌われると。その部分を少しでも和らげなきゃ、聞きたい話も聞けない。明日、常識ある時間に電話をして伺ってもいい時間を聞く。だから、焦って余計な事をするなよ? じゃあな」

 言いたい事だけを一方的に言い、彼は会議室を完全に出て行った。
 残された私はといえば、暫くその場に立ち尽くしていた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


コメントを残す

おすすめ作品

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第34話「それでも――――」

   2017/11/20

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】15

   2017/11/20

ロボット育児日記39

   2017/11/17

忠実な部下たち

   2017/11/17

モモヨ文具店 開店中<36> ~帰り行く者~

   2017/11/16