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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

その果ての刃 6

   

合流したふたりは井沼さつきを訪ねる。
訪ねた先で、亡くなった3人の司法解剖結果の連絡が入り、彼女から真実を聞き出せと指示が出た。
するとさつきの口から17年前の事件の話がでる。
どうも今回の事件は17年前の事件となんらかの関わりがあるらしい――あの、花言葉の持つ意味も…

 

 温泉宿の入り口に車を横付けすると、すぐ芳本先輩が助手席に乗り込んできた。
 場所を移動しようという提案に私はただ頷き、彼の指示通りに車を走らせると、着いた場所は井沼さつきのマンション近くだった。
 車から降りずに私たちは互いに得た情報交換をする。
 それぞれ、三人の被害者は夏子・さつき姉妹を通じてなんらかの繋がりがあることを突き止めていた。

「個人所有のビルを持っていたのか……なぜその情報が出てこなかったのかが不思議だな」

「夏子が被害者だったからではないですか? もし、夫が所有していたらすぐ出た情報かと思います」

「湯江、この日本はな、加害者より被害者情報の方が早く世に出回る。夏子がビルを持っていた事がでなかったのは、それを知っている者が言わなかったからだと思っている。そうさせたのは、多分さつきだ」

「夫の猛も同じではないでしょうか? 地道に働いている夫より、賃貸で収入を得ている妻の方が稼いでいると思うし」

「そうだな。このまま猛が無罪放免となれば、相続で多少金が入る。だが、今のところ無罪と言える証拠もないがな」

「そうでしたね。先輩が得たこの……温泉宿の建て替えの仕事、さつきが風谷に頼んだのではなく、風谷の方から寄こせと言ったというのが気になります。クラブとホストクラブの方はさつき自らお願いしたようでしたので、これも当然そうなのではないですか?」

「時期が少し違う。内装を変えたのは、夏子が結婚をして一線を退いてからだ。多分、名義替えは出来ないけど、さつきの自由にしてもいいという契約でもしたんだろう。それが3年前。その間さつきを通しての仕事をしたような事実がない。それが突然今となると、風谷が金に困ってさつきを頼ったという見方ができる。次第に鬱陶しくなったさつきが風谷を殺害、それの手助けをしたのがまゆと夏子。そのふたりの口を封じる為にさつきが……」

「それだと先輩の見解と外れますね。愛するが故の殺意というものと」

「そう、そうなんだよな。男性器や女性の乳房を切り取るなんて、絶対に怨恨じゃしない――と、俺は思うんだが。女の湯江はどう思う?」

「私は初めから愛するが故の殺意には同意し兼ねてますので、憎しみが少なからず入っていると思います。でも、ブーゲンビリアの花言葉が気になります」

「さつきの店近くに造花があるからか? 確かに、何かのメッセージ的なものも感じるっちゃあ感じるが」

 元々男には、花言葉や占いみたいなものの類を信じて活かすような習慣はなく、いまいち真実味に欠けてしまうと先輩は申し訳なさそうに言う。
 確かに事件は現実に起きていて、そういう感性的みたいなものは現実味が劣ってしまう。
 目に見えるもの、手ごたえが感じられるものでなければ説得力に欠け、決め手にならない。

「ま、臆測でする話もここまでだ。これでもう一度井沼さつきに会う理由が出来た。これから行くぞ」

 助手席から外に出た芳本先輩は、この辺りでは珍しい高層のマンションを見上げる。
 昼を少し過ぎた今、太陽は真上にあり、風もない。
 昨日と違い、今日は少し身体を動かせば汗ばむ暑さもある。
 この時期の安定しない気温変化にうんざりしながら、私は手で頬の辺りを仰ぎながら車のドアを閉め、先輩の後に続いた。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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