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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

その果ての刃 7

   

全ては17年前の事件から始まっている――さつきの話を聞き、それを確信するふたりの刑事。
しかし、その事件にまだ刑事になる前の湯江が関わっているらしい。
その真実とは?

 

「結果的には間違っていないと思っています……」

 当然否定すると思っていた私は驚くというより恐怖が募る。
 覚えていない私はいったい何をしたのだろう――と。

「正しくは、私がキリカにさせた……でも、まさか、あんな結末になるとは思っていなくて。今なら、そういう流れになるかもしれないと思えるのかもしれないけれど」

 この場にいるのが怖く、ない記憶の部分を知る怖さなの中にいる私とは違い、さつきは淡々と話し、芳本先輩は表情ひとつ変えず、彼女の話に耳を傾ける。

「『風谷の家は花屋よね。花言葉を知っている可能性があると思うの。ブーゲンビリアの花言葉ってあなたしか見えないっていうの。咲く時期は夏のはじめだけど、今でも充分咲いているから大丈夫。その花を、さつきのお母さんからって言って私が渡してくる』花言葉を知っていれば絶対来るとキリカは言う。どうしても母を奪われたくなくて、私はお願いって言ってしまったの。翌日、何食わぬ顔で井沼の庭にある花の手入れに来たその人に、キリカは『これ、さつきのお母さんから。いつものところで待っていますって』と言ってブーゲンビリアの花を手渡した」

「そうか! 持続的な関係であれば、逢引している場所があるはず。しかも決まった曜日や時間。だが、予定外の誘いをかければボロがでる。しかし、子供がそこまで計算して大人を騙せるものか? いや、まて。騙せるかもしれないな。相手が子供であれば変な疑いは消える。偶然と運が重なれば……」

「その通りよ、刑事さん。偶然と運が重なった。男は来ない女をひたすら待つ。待っても待っても来ない。理性があればバカな行動をしないはずなのに、理性が保てなかった男は白昼堂々と母を訪ね迫ったの。しかも私や父のいる前で。当然のように母は父の前で自分を擁護したし、自分の妻に色目を使った男を父は激怒して、花屋が井沼のご婦人に色目を使ったとか夜這いしていたとか噂は瞬く間に広がり、男はあてつけのように、井沼の家の庭で首を吊った。手にはブーゲンビリアの花を握って」

「そんな事をしちゃ、残された風谷の家族は花巻で暮らしていけないだろうな。だから都心に逃げるように越したのか。だがなぜ湯江も転校したんだ? 湯江が殺したとでも言われたのか?」

 いいえとさつきは首を横に振る。

「当時、キリカは生方という姓を名乗っていた。今は湯江と名乗っている……ご両親が離婚でもしたの?」

「いいえ。父も母も、昔と同じよ。それに、母の姓は生方ではないし」

 親戚の誰かに預けられていたという記憶もないし、そんな話を聞かされた事もない。

「そう。それは、どういうカラクリなのかしらね。でも、もしかしたらあの時の事がきっかけで苗字を変えたのかもしれないと、私は思ったのよ」

「それはつまり、精神的に参った湯江の環境を変え、記憶を消し、湯江キリカという人物を作り変えたということか」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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