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成功商会取扱物品—001 出宝袋(中)

   

百合から袋を手に入れた須永は、炭クズを小粒のダイヤに変換し、目立たない形で換金することに成功する。

借金返済に十分な金を手に入れた須永は、全盛期のような派手な格好で、東京に足を運ぶのだが……

 

 ミステリアスな雰囲気を持った美少女、百合からプレゼントを貰ったことで、徐々に俺の全身に、助かったという実感がみなぎってきた。
 何がどうなってるのかはまるで分からないが、とにかく俺は経済的危機を脱し、しかも成功の保証までも手に入れた。
 好きなタイミングでいつでも資金を補充できるのであれば危険なトレーディングも、ノーリスク・ハイリターンの「作業」と同じだ。
「落ち着け、落ち着けよ、俺っ……」
 歓喜の叫びを上げたくなる衝動をギリギリのところで抑え、俺は、久しぶりに脳細胞を回転させ、これからの注意点を意識の全てに刻み込んでいった。
 まず、唯一の約束事である「知られない」ことを徹底しなければいけない。
 招かれざる俺の「友人」たちは、金のためだったら、簡単に人の命を狙ってくるような連中だ。
「不審な革袋」の存在に感付けば、まず俺を捕らえて拷問にかけるだろう。白状したら袋の秘密を守るために始末するだろうし、喋らなくても、拷問の口封じのために命を奪うだろう。
 つまり、見とがめられたら終わり、ということだ。
 革袋を見せびらかすわけにもいかないが、ここに置いてどこかに出るのもうまくない。となれば、常に懐の中にでも入れて持ち運ぶのがベターだろう。
「それじゃあ、すぐに売っ払って……いやっ、ダメだ!」
 俺は、百合が残していった特大のダイヤを手に取りかけて、考え直した。
 これほどのものは、一般の宝石店どころか、博物館でもまずお目にかかれない。業者に見せても、偽物と思われるか、でなければ盗んだと疑われるだけだ。
 結局、今の俺にとって、どんなに美麗な宝石でも、換金できなければ、ただの石ころと同じだ。
 怪しまれずに金を出してもらえるような「小物」を大量に揃えておかねばなるまい。
 また、売る業者は適当に分散させるとして、タイミングにも注意しなければならないだろう。
 俺が「生産」して市場に回せば回すほど、ダイヤはだぶつきやすくなり、だぶつけば物の値は下がる。
 つまり、売れば売るほどこちらの旨味も減るわけで、物品はともかく、無尽蔵に富を得ることはできない。
 もっとも、稼ぐアテがどこにもなく、ついさっきまで八方塞がりだった俺にしてみれば、そんなことは贅沢な悩みなのかも知れない。
「ようし……」
 手近なところにあった炭クズを細かく砕いて袋に入れ、小粒ダイヤに変えるという作業を何度か繰り返したところで、俺は、外に出る決心した。
 この「隠れ家」も、いつ嗅ぎ付けられるか分からない。
 宝物の存在が露見する前に、さっさと借金を返してしまったほうが利口だ。
 俺は、「創作」されたダイヤと革袋をポケットにしまうと、家を後にした。

 

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