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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

その果ての刃 8

   

全てが解かれる――完結

※事件解決という意味での完結ですが、湯江刑事の過去はまだこの時点で明らかになっていません。
そちらはこの後の番外編に続きます。

 

「どういうことだ、湯江」

「順番に話します。正確な動機については、これから話す事が正解なら、さつきさんの方から話してください。お願いします」

 テーブルに額がつく程深く頭を下げる。

「あなたのお願いを私が断れると思う? でもひとつだけ約束をして。あなたの過去を私にもちゃんと説明をして欲しい」

「私の記憶が欠けている事と、苗字が違うことね。可能な限り調べて打ち明けます」

 記憶が無くても彼女は私の大切な友達であったことはわかる。
 記憶がなくても感情というか気持ちが懐かしさを訴えているから。

「では話を進めます」

 仕切り直すように言うと、さつきは静かに息を吐き、先輩は横から私の顔をじっと見つめた。

「そもそも私たち警察は大きな先入観で捜査をしたことで、遠回りをしてしまっているんです。死体が発見された順番と死亡時刻の順番は同じではないんです。微妙な時間差があります。到底ひとりではできない犯行なんです。風谷、一之瀬、井沼夏子という順番で発見しましたが、死亡時刻の順番は、一之瀬、風谷、井沼夏子です」

「……なんだって?」

「さっき、確認しました」

「……そういう大事な事は最初に言えよな」

 誰にボヤクわけでも芳本先輩はポロリと口からこぼす。

「誰も疑わなかったのですから、仕方ありません。先入観とか思い込みって怖いですね」

「ああ。俺も初心の慎重さを忘れていたってことだ。で?」

「一之瀬さんは絞殺、風谷さんは失血死、夏子さんは自殺です」

「な、なんだって?」

「これも思い込みですね。連続で見つかった死体、前の2体が明らかに他殺だった為、3体目も他殺だと思い込んでいたということです。でも、そう思い込むように仕組んだのはさつきさんです」

 私の言葉を受け、芳本先輩が私とさつきの顔を交互に見た。

「面白い事を言うわね。聞きましょう、私が何を仕組んだのか」

「順を追って話します。まず一之瀬さんと共にラブホに入ったのは風谷さんではないですか? 特殊な性癖がある彼は、金で受け入れてくれる人を日頃から探していた。まゆさんはさつきさんや夏子さんに恩を感じていた為、ふたりの顔見知りである風谷さんを邪険にはできなかった。到底相場とは思えない低いお金でも、受け入れた。3年前の件も知らずに。だけど、なんらかの方法で彼があなた方をゆすっていた事を知り、懇願したのだと思います」

「なぜ特殊な性癖があると思うのかしら?」

「彼女の死因が絞殺だからです。首を絞められた跡は、新しいものと少し時間が経過したものがあったそうです。殺されるかもしれないという人とふたりきりで会うでしょうか。そういうプレイであって殺意はない、だから関係を続けた。そこにあるのは愛情ではなく、お金だけですけど」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド


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