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成功商会取扱物品—001 出宝袋(後)

   

借金を完済し、無限に湧き出る「財源」を手にした須永は、腕利きの発掘者として知られるようになっていた。

「換金」をしやすくするための方便から始めた発掘事業は、須永に社会的地位と名声をももたらした。

得意の絶頂にある須永は、その日も依頼を受け、ケーブルTVの収録に出向いたのだが……

 

 借金取りたちをまいて、無事大阪にたどり着いたことで、俺の運は、一気に上向いたようだった。
 まず、大阪の債権者に金を返しつつ、東京からの追っ手に対処してもらった。
「心付け」をたっぷりと加えたことが効いたのか、それ以来借金取りは、一度も現われて来ない。
 借金を精算してからは、完全にとんとん拍子で事が進んだ。
 何をするにも金は必要だが、炭クズや木クズを放り込むだけで、宝石が手に入るのだから、労働の必要もなく、失敗も有り得ない。 好きなものを何でも手に入れられる立場に至ったのだ。
 後は、つまらないスキャンダルで、「袋」の正体を暴かれたり、換金のし過ぎで宝石の相場を崩してしまわないよう、注意していればいいだけだ。
 面白いように金は集まった。
 ある程度換金を繰り返したところで、人を雇い、質屋や宝石鑑別業者の窓口に立たせ、怪しまれないように工夫した。
 それでも最近は目立ち過ぎるような気もしていたので、さらにいくつかの「小道具」を使いこなすようになっていた。
「……よしっ」
 俺は鏡の前で、最高の笑顔を浮かべてみせた。「笑顔」も有力な小道具の一つだ。
 いつも通り、完璧な笑顔だった。
 全財産が一万円にも満たなかった頃、二年前の面影は、かけらほども残っていない。
 魅力的な新ビジネスを展開する、気鋭の経営者兼ジャーナリストであるからには、爽やかさと清潔感は最大限に含めておくのがベターだ。
 地元のケーブルTVの取材、今の俺にとってはさほど大きな案件ではないが、知名度と好感度をアップさせていけば、その分だけ、俺の蓄財方法に「説得力」が加わる。痛い腹を探られずに済むというわけだ。
「ぬうう……っ、ふんっ」
「袋」に向けて念を込め、中身を取り出す。
 スチールと木クズと炭クズとガラスの破片を放り込んだ結果、木と合金が混ざり合った、何とも不思議な色合いと手触りをした懐中時計が出来上がった。
 中世風の彫金デザインといい、「遺跡で発見された」と主張するにはふさわしい一品だろう。
 俺は、ここ二年ほど、遺跡発掘会社の社長として活動している。 空撮画像を見ることができるソフトを使って、ネット上で遺跡を上空から調査し当たりをつけ、契約している熟練のスタッフを派遣して、発掘をしてもらうというのが、大まかな仕事の流れだ。
 もちろん、実際に発見できることもあるが、そうじゃない時は、この袋と、俺の想像力の出番となる。
 うまく想像力を使ってやれば、結果の是非に関わらず、いくらでも「重要な遺跡の発掘」が可能になってくるというわけだ。
 先進的な手法をアリバイ的に導入したこともあり、今の俺は、さほど怪しまれることもなく、世界的に有名な民間発掘業者の社長として、大いに名を売っている。
 文化的な事業ということで、政府からはたっぷり補助金が出るし、博物館などでの十分な公開を条件に発掘品を民間人に売却することも多いので、無理な「換金」をしなくても、資金繰りに困ることはない。
 しかも、社会的な地位まで手に入る。非常においしい案件だった。

 

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