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幻影草双紙19〜都市伝説〜

   

 某作家の文体を真似していると不幸になる、という話をご存知ですか。
 都市伝説だとは思うのですが。
 某作家とは、日本文学に名を残す有名な人で、最後は自殺でした。

 

 都心にある外資系の高級ホテル。
 そのエグゼクティブフロアは、セキュリティが厳しい。
 もともと厳しいセキュリティが、この数日は、さらに厳しくなっている。
 各国から要人がこのホテルに集まり、経済関係の会議が開かれているのだ。

 君島美枝は、〈プレス〉のカードでセキュリティを通過し、部屋へ戻った。
 広い、セミスイート仕様の部屋である。
 君島美枝が一人で使うには広すぎる部屋だ。
 そして高価である。
 取材だけなら、別に、エグゼクティブフロアに部屋をとる必要はない。
 一般のフロアならば、値段は、安い。
 なぜ、わざわざエグゼクティブフロアにしたのか?
 もし理由を聞かれたら、
 現場にいるのが当たり前じゃない――。
 と答えたであろう。
 彼女はフリーのジャーナリスト。
 経済関係の会議を取材しているのだ。
 取材し、記事を書いて、通信社に売り込まなければならない。
 そのためには、先ず、現場に身を置く必要がある。
 現場の空気を感じるのが、何よりも大切。
 また、多くの資料を検討し、レポートにまとめるには、広い部屋が必要となる。
 フリーの者として、他人が思いつかない切り口を書かなければならない。
 そのためには、落ち着いた広い部屋で考えなければならない。
 こうしたことが、セミスイートを使う言い訳であろう。
 言い訳である。
 本音は別にある。
 単にリッチな気分に浸りたいだけなのだ。
 君島美枝は、三十代後半の自立した独身女性。
 世界の通信社と契約しているジャーナリストで、貯金は十分にある。
 このくらいのセミスイートでも、驚くことではない。

 

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