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成功商会取扱物品−002 刺文講座(後)

   

偽造手紙によって池田たちを動かし、リンチの現場を押さえることができた寺本は、アクシデントを武器に、長田の身を保護することにも成功する。

寺本はさらに、実験がうまくいったことで、「本番」の計略を進めていく。周到な準備に加え、長田をスケープゴートに仕立てたこともあり、計画は順調に進んでいったのだが……

 

 池田たちは延々と、長田を取り囲み、殴り付けていた。
 頭にパンチを入れられた長田がその場に倒れると、再び引き起こし、さらに蹴りを入れる。
 まったく洗練していないが、その分、絶対に許さないぞという歪んだ決意が伝わってくる。
(もっとだ、そう、もっとやるんだっ)
 僕は、自分の心臓の音を聞きながら、目の前に向けて、カメラを回していた。
 煙幕と爆竹は用意してあるが、まだまだ踏み込むつもりはない。 連中の意気込みとは裏腹に、長田への累積ダメージは、大したことはない。
 今のところ、全治二週間という程度だ。拡大解釈込みで、殺人未遂まで見込むんなら、少なくとも、全治二、三カ月は「欲しい」。 もっとも、池田たちは興奮しているので、煽らずとも放っておけば、いずれラインを超えるだろう。
 僕は気配を殺して、撮影を続けていればいい。
「ぜえあああっ!」
 だが、五分ほど経ったところで、池田が思わぬ行動に出た。アメフトかラグビーの選手のように頭を大きく下げ、気合いとともに前に突進した。
 隙は多いが、競技経験でもあるのか、一応訓練された動きだ。
 自分よりもずっと大柄な池田に頭からタックルを決められた長田は、当然の結果として体ごと吹っ飛び、木の壁に全身を叩き付けた。

ドゴッ!

「うっ、うわあああっ!」
 僕とほとんど変わらないぐらい小柄な体格の長田がぶつかったぐらいで壊れてしまうほど、木造校舎の壁が脆くなっていたとは予想外だった。
 鈍い音と悲鳴とが響き、木片とともに長田の体が、頭から校外に叩き出された。
 うっそうと生い茂った林の下にあるのは、黒く輝く、飛びきり硬い石畳である。この高さからでも、頭を叩き潰すには十分過ぎるだろう。
 音楽室の中から、予期せぬ出来事に、凍り付いた雰囲気が伝わってくる。

 

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