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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録2 第3話

   

 記録2《チャンスが来たら、死ぬ気でつかめ》

 土地・建物のアイデアは、I氏の話からインスピレーションを受けました。

 

 桜小路悟一は、現在は、平成錦秋大学教授という肩書きを持っている。
 もちろん、最初から教授であった訳ではない。
 研究者になりたての頃は、肩書きもなかった。
 いろいろな学校で、数学を教えるバイトをするだけであった。
 何年かして、ようやく、平成錦秋大学の助手の職が見つかった。
 バイトではない、生活保障がきちんある職である。
 生活が安定し、余裕が出来て、それでどうしたか?
 熱心に数学を研究するようでは、自称天才数学者の名が廃る。
 将来のテレビタレントをうかがわせる、図々しさ、軽薄さが出てきたのだ。
 東洋テレビへ電話をした。
 まだヒラのディレクターであった錦織真之が、電話へ出た。
「はい、東洋テレビ」
「あのう、テレビの企画があるんですが……」
「何?」
「『江戸川乱歩推理劇場』、なんてどうでしょうか」
「つまり?」
「明智小五郎と怪人二十面相の対決です」
「それだけ?」
「ドラマの最後に、トリックの解説をする」
「映画解説みたいなもんだな」
「そうです」
「解説者は?」
「私にやらさせてもらえませんか」
「あんた、何者だね?」
「平成錦秋大学で数学を教えています」
「平均台か。肩書きは?」
「助手です」
「じゃぁ、駄目だ。大学関係は、肩書きに〈教授〉がなければ、商品価値はない」
 錦織真之は、乱暴に電話を切った。

 

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