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ノンジャンル

あの娘に近付く方法

   

結婚相談などを専門に行う「木藤カウンセリングセンター」を運営する木藤 茂のもとを、一人の男子高校生が訪れた。彼の名は、佐倉 伸一。この辺り一帯に強い勢力を持つ第一佐倉グループの一人息子である。

伸一は、同じ学校に通う仁科 小百合に恋をしているのだが、交際をしていくには、様々な問題があった。能力的にも伸一では小百合とまったく釣り合うことができない上、佐倉家と仁科家はライバル関係にあり、家の事情的にも付き合うことはできそうになかった。おまけに伸一たちは高校三年生で、受験を挟んで離れ離れになる可能性すらある。

一見、どうにも手の打ちようがないこの状況。しかし木藤は、この全ての問題点を解消し、しかも伸一と小百合を近づける秘策を示す……

 

「珍しいお客さんですな。ああ、いえ、構いませんよ。一応年齢的には適格ですし、僕も暇していますからね」
 木藤カウンセリングセンターの所長である、木藤 茂は、思わず口から漏れ出てしまった本音を、笑顔と柔らかい言葉で取り繕った。
 一応、心理カウンセリングを専門にしているというものの、開業以来、ある程度年齢が上の男女の結婚相談や人間関係解決が主な業務になっているこの事務所に、高校の制服を着た依頼者が来るのは極めて異例のことだった。
「すっ、すみませんっ。で、でも、他に頼れる人もいなくって……」
 木藤に対して、恐縮し切った様子でぺこぺこと頭を下げているのは、佐倉 伸一。
 地域でも一部の富裕層しか通えないとの評判である、私立剣藤学園の制服を行儀良く着こなした姿からは、彼が受けてきたマナー教育の確かさがそのまま示されているようにさえ思える。
 目元にも口元にも甘さがあって、しかも童顔だが、そのあたりを差し引いても、ルックス的にはチヤホヤされる側の人間だろう。
 十八歳という年齢のことがなくても、本来、木藤のような存在を必要とするようなタイプではない。
「承りましょう。完全成功報酬性とは言え、私はプロですからね。頼れる人がいない方のための存在というわけです」
 出方をうかがうために、少々高飛車な態度に出た木藤に、伸一は、くりくりっとした瞳を輝かせ、頷いた。
 どうやら、かなり素直というか、人を信じやすい性格をしているらしい。
 将来に不安があるが、まあ、策を授けるためには、この手の気質の方が好都合ではある。

 

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