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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

自称天才数学者の推理記録 記録2 第4話

   

 記録2《チャンスが来たら、死ぬ気でつかめ》

 《奇貨、居くべし》。
 珍しい品物は、後日のために買っておけ、というのが元の意味です。
 転じて、チャンスが来たら、死ぬ気でつかめ、ということになります。

 

 平成錦秋大学の助手になった桜小路悟一は、職務に励んだ。
 そして十年が経過して、彼の肩書きは、助教授となった。
 助教授になると個室が貰える。
 その部屋をノックする者があった。
「どうぞ。開いてますよ」
 入ってきたのは、女学生であった。
「質問? ま、お座りなさい」
 一番前の席で、いつも熱心に、桜小路悟一の講義を聴いている女学生なのだ。
 顔かたちや雰囲気で、周りの学生よりも年上であることが分かる。
 年齢は、二十代後半、であろうか。
「先生、授業でやる数学は、ずっと、ああいう事なんですか?」
「うん。物足りない?」
 桜小路悟一が教えているのは、文化系の学生である。
 〈数学〉と聞いただけで、アレルギーを起こす学生が多い。
 授業も、易しい話にしなければならないのだ。
「はい、もっと難しいことが知りたいんです」
「頼もしいね。どんな事が知りたいの?」
「相対性理論なんです」
「ええ?」
「相対性理論を勉強するには、難しい数学が必要だって聞きましたので。先ず、そこから……」
「物理学者になりたいの?」
「タイムマシンを勉強したいんです」
「タイムマシン?」
「はい。過去や未来に、どうやって行くのかを知りたいんです」
「君は、タイムマシンとか、そういうのが好きなんだ」
「ええ。過去や未来に行ったらどうなるか、を考え出すと、止まらなくなって……」
「いいことだ。考えるのが数学の原点だ。何か、考えるきっかけが、あったの?」
「そうなんです。これ、話すと長くなりますが……」
「かまわない。学生の話を聞くのが、僕の商売」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

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