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幻妖奇譚<7> 1週間後(下)

   

幻妖は、どんな場所にもどんな時刻にも、容易に用意されているのです。

 

 内山秀雄は、吉田哲也がUFOを見たという話に戸惑った。
 それから昔のことを思い出した。
「なんだ、またあの頃の議論をやるのか」
「そんなのじゃない。とにかく最後まで聞いてくれ。
 UFOとは言い過ぎかもしれんが、大きな葉巻型のものが林の上に見えたんだ」
「雲じゃないのか。いやにはっきり、夜空に雲が見えることがある」
「最初はそうかと思った。
 ところが、見ているうちに……、両端がだんだん尖ってきて、真ん中の所に、黒い丸が出来てきた。
 それでとうとう……、巨大な眼になった」
「め?」
「人間の眼だよ。巨大な眼が夜空に浮かんでいて、それが俺を見つめているんだ」
「……」
「見据えられて金縛りにあったようになっていると、突然、その眼が消えた。
 消えてしまうと、夢でも見ていたんだろう、としか言いようがないんだが、なんともしれない薄気味の悪さは残っている」
「そりゃ、そうだろうな」
「その日は、薄気味悪くなって、すぐ寝たよ。
 ところが……、次の日は夢で見るようになったんだ」
「夢で眼を見るのか?」
「もっと酷いもんだ。
 夢の中で――、やはり夜、一人、書斎で仕事をしているんだ。
 窓は開いていて、林は丸見えだ。その林の中から手が出て、伸びてくる」
「て?」
「人間の手。それがどんどん伸びてきて、俺の窓から入ってくる。
 そして、隣の部屋で寝ている女房のお腹をさするんだ――」
「!」
「妊娠して大きくなったお腹をさするんだぜ。
 そこでびっくりして、俺は目を覚ました。隣を見ると、女房はスヤスヤ眠っている。
 完全な夢さ――。
 でも、この同じ夢を毎晩見るんだ……。もう五日も続いている」
 二人は雑木林に囲まれた小高い丘に辿り着いた。
「さあ、ここだ」
「なんだい、ここ?」
 そこには、朽ちた屋敷が草木に覆われていた。
 寺の廃墟みたいである。
「夢を見始めた二日目に、いくらなんでもここの林がおかしいと思って見に来たんだ……。
 これを見てみろ」

 

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