幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ノンジャンル

恐喝封じの魔法

   

武居 清彦に弱みを握られた藤原 洋二は、執拗な恐喝に苦しんでいた。学校や警察に言おうにも、全てのいきさつが明らかになったら、藤原は極めて苦しい立場に追い込まれてしまう。だから、どうすることもできず、ただ金を支払い続けるしかないというのが現実だった。

そんなある日、学校でも一番の切れ者と噂されるクラスメイト、野際 竜が、藤原に向け一つの策を提示する。それは、「茶封筒の中身に『魔法』をかけておくから、その封筒を手渡せ」というものだった。

翌日、藤原は、金の取立てに来た武居に対し、野際から言われた通りに封筒の中身を差し出したのだが……

 

「ひっ、ひいっ、ごめんなさいっ。まだお小遣い貰ってなくって……!」
「んだと、こらっ。調子乗ってんじゃねえぞ、てめえっ。延滞なんかできる立場だと思ってんのか! てめえの支払いが遅れたせいで、ソフト買えなくなるかも知れねえんだぞ!」
 ぺこぺこと頭を下げた僕のお腹に、武居 清彦のパンチがめり込んだ。
 さっき食べたものが出てしまいそうなほどの重い衝撃が内臓に響く。だけど、倒れることはできない。
 武居と、この様子を遠巻きににやにやと嘲笑している取り巻きたちから、「根性が足りねえ」と罵倒され、さらに殴られるからだ。 僕は何とか体勢を立て直し、顔を上げた。
 武居は、苦痛に歪んでいるだろう僕の顔を見るのが楽しくて仕方がないという風に、いやらしい笑みを浮かべている。
「なあ、藤原。てめえ、まだ何か勘違いしてやがるな。俺はな、情けをかけてやってるだけなんだよ。もしお前がどうしても嫌だってんなら、洗いざらい全部、喋ったっていいんだ」
 武居は、ポケットの中から一枚の写真を取り出した。
 そこには、僕の顔が映っていた。
 今は使われていないはずの手芸部の部室の中で、麻雀卓を囲み、酒を飲んでいる僕の姿がはっきりと映っている。
 缶ビールの銘柄まで確認できるのだから、見間違いの余地すらない。
「はうう……っ!」
 僕は、心臓をわしづかみにされたような錯覚を感じて呻いた。大失敗の記録など、何度見ても慣れるものじゃない。
 事のきっかけは、数ヶ月前、クラスメイトから麻雀に誘われたことだった。
 あらゆる事に厳しく、息抜きや娯楽とはほとんど無縁の環境で育ってきた僕だったが、唯一、麻雀だけはできた。
 だから、興味がわいて参加するようになった。
 どうやら、仲間内では僕のレベルは相当に高かったようで、勝ち続ければどんどん気分も良くなり、対局相手とも打ちとけていく。
 解れた空気は、プレイしている時の姿勢にも如実に現れてきた。 部室で麻雀を打つようになってから一月でお菓子や飲食物が、三ヶ月が過ぎた頃にはお酒が出てきた。
 僕としては積極的に飲もうとは思っていなかったのだが、場の空気に流され、ほんの少し口を付けてしまった。
 とは言え、飲酒経験のない僕がまったく酔いを感じないぐらいの微量だったはずだ。
 本来だったら、ちょっとした悪ふざけで終わるような話だったのかも知れない。
 しかし、その現場を、武居が撮影していた。明確な証拠と弱みを、握られてしまったというわけだ。
 以来、僕は、武居たちに言われるままに「示談金」を支払う立場に追いやられてしまった。
 実際、このことがバレたら、まず無期停学、悪くすれば退学だ。 もしそうなったら、厳格極まる両親は、決して僕のところを許してくれはしないだろう。
 完全に、将来も何もかも、全てが終わってしまう。
 状況を覆すような要素は、何一つ見出すことができない。

 

-ノンジャンル


コメントを残す

おすすめ作品

道 第三回 新旧、二つの才能

不思議なオカルト研究部 第四話 抜粋談

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(22)

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(24)

エリカの花言葉 第1話 エリカ《孤独》 2