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ラブストーリー

もういちど、すきって言ってもいいですか 7

   

カレの指があたしのふくらはぎにそっと触れる。

筋肉の隆起を確かめるようなその指使いに、あたしの喉は声にならない吐息を漏らした。

――なんて、いじましい妄想はもうおしまい。

カレの言葉に囚われたあたしを、明るい日差しの下に引っ張り出してくれるあの人が笑う。

好き?

好きじゃない?

自分の気持ちに素直になったら、答なんてはじめから決まっていた――。

 

 日曜日。
 学生時代から続く彼氏居ない同志、祥子からの電話が鳴ったとき、あたしこと藤井絵里は黒いスポーツワゴンの助手席で膝を抱えてうずくまっていた。

 二人きりの車内はじっとりと重苦しい。
 昨日までの長雨が一段落し、久しぶりの快晴となった外とは大分空気の重さが違う。
 あたし自身が言葉に詰まってしまっていたときだっただけに、これは天の助けと思ってそそくさとバッグから携帯電話を取り出した。

「藤井先生、時間無いんですから」

「ちょっと待って、昔からの友達からの電話だから。――あ、もしもし、祥子?」

 運転席で腕時計を指差す大鳥先生の顔が膨れるのが分かる。
 楽しみにしているお菓子を前に、我慢させられている子どもみたい。

 

-ラブストーリー

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