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幻影草双紙24〜窒息〜

   

 床屋では、髭を剃った後、熱いタオルを顔にかけます。あれが苦手です。
 タオルが取れなくなったら、窒息してしまう……。
 という恐怖がありまして。
 すぐ取ってくれ――!
 と、パニックになるのです。

 

 上野正太は、三十歳。
 大学を出て、全国展開をしているコンビニを束ねる会社に入り、ほぼ十年になった。
 来月から、新企画マネージャーに昇格することが決まっている。
 この十年間、必死に働いた成果であろう。
 同期の中では、出世が早い方である。
 昇格が決まった後、連休を利用して上野正太は郷里へ帰った。
 叔父の小林和円に会うためである。
 小林和円は、小さな寺の住職をしている。
 上野正太が寺の門を入ると、小林和円は、庭の掃除をしていた。
「叔父さん、しばらくです」
「やぁ、正ちゃん。しばらくだね」
「連休を利用して帰ってきました」
「ほほう、いよいよ結婚か? その報告に来たんだろう」
「いいえ。まだまだ独身生活を楽しんでいますよ」
「確か、今年三十だろう? もうそろそろ……、ご両親を安心させなくては……」
「それは考えています。でも、今度の帰省は、叔父さんに会うためなんです」
「私に? 何か、特別な用があるの?」
「はい。幽霊を退治するお経がありませんか?」

 

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