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幻影草双紙25〜藤の花が咲く頃に〜

   

 藤の花。
 花言葉は陶酔です。

 

 男は、寺の庭にある池のほとりのベンチに座っていた。
 藤棚から、藤の花がたわわに下がっている。
 今は――、藤の花が咲く季節。

 この寺は室町時代に創建された、といわれている。
 本堂は江戸時代、五重塔は昭和に再建されている。
 だが、寺の敷地や建物の配置は創建当時のままであった。
 近年改修された山門を入ると、広い砂利道が本堂まで続く。
 本堂から左手へ回ると、五重塔へと続く道になる。
 その先は、いくつかの礎石が残る森となる。
 創建当時にあった毘沙門天堂などの跡なのだ。
 本堂から右手へ回ると、広大な庭園になる。
 室町時代特有の、禅宗好みの庭園である。
 その庭園の真ん中に池があり、池のほとりに藤棚がある。
 庭園を抜けると、そこは墓地であった。
 室町や江戸時代の墓石もあるが、昭和、平成の墓石もある。
 お盆やお彼岸の季節には、墓石に花が並び、線香の煙が墓地を霞ませる。
 古刹ではあるが、〈現在進行形〉の寺でもあるのだ。
 地元の者にとっては、生活に密着した場所なのである。

 

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