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明治桜花大学七不思議 3

   

《自称天才数学者の推理記録》の《番外編》の《明治桜花大学七不思議》の、〈その3〉です。
 桜通りにある学内案内地図の掲示板には、無数のおみくじが結んであります。
 北野天満宮のおみくじをこの掲示板に結ぶと合格出来る、というジンクスが、受験生の間にあるそうです。

 

* 七不思議 その3。

《桜通り》

 源氏と平家の最後の合戦、壇ノ浦の戦いは、1185年の三月のことである。
 この合戦で敗れて平家は滅亡した。
 生き残った者たちは、源氏に見つからないよう、都からはるか離れた奥山に隠れるしかなかった。
 なにしろ、日本中が源氏の天下になったのだ。
 隠れる場所は、奥山の、そのまた奥しかない。
 日本各地の奥山の果てに、平家落人の伝説がある。
 例えば、青森の天皇山、群馬の片品、富山の五箇山、熊本の五木村、などなど。
 有名なのが、徳島県にある祖谷渓である。
 吉野川の支流が作る渓谷で、深山に囲まれている。
 この地に行くには、吊り橋を渡るしかない。
 なるほど、平家の落人が、ひっそりと暮らしたんだろう、と思わせる土地環境ではあるのだ。

 だが、平家の落人の全てが、都から離れた場所に隠れた訳ではない。
 平景盛は、奥白河院清子を擁して、秩父山地を目指した。
 関東地方は、源氏の本拠地である。
 なぜ、わざわざ敵地へ行くのか?
 これは、戦略で天才といわれた平景盛らしい行動であった。
 いわゆる、〈灯台もと暗し〉という作戦なのである。
 広大な関東平野は、源氏一族の庭みたいなものではある。
 しかし、関東平野の先は原生林になり、秩父山地の山岳地帯となる。
 今でこそ、誰もが登山をする場所であるが、当時は、文字通りの山岳地帯であった。
 山を棲みかとするマタギのような人々以外、だれも近づかない山岳地帯なのだ。
 普通の人々、つまりは関東平野に住む源氏は近づかない。
 同時に、関東平野に近い。
 まさかそんなところに、平家の落人がいるとは、源氏は思わないであろう。
 こうした考えから、平景盛は、秩父山地に身を潜めることにしたのである。

 

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